しいたげられたしいたけ

空気を読まない。他人に空気を読むことを要求しない

B・シュリンク『朗読者』(新潮文庫)

朗読者 (新潮文庫)

朗読者 (新潮文庫)

久しぶりに外国文学を読んだ。
主人公は、15歳のとき、20も年上の女性と恋愛関係に落ちる。のちに法学生となった主人公は、女性がナチス強制収用所に関ったとして裁かれる法廷を傍聴する。
p112の記述で、物語の時代が1960年代と知れる。ヒロインの「秘密」はp152で明かされるが、通常の読解力を持つ読者はもっと早い時点で見破れるであろう。
むしろこの本の読みどころは、読者が主人公に感情移入してドイツ人となりドイツ人の立場からアウシュビッツはじめナチスの行った大量虐殺に直面することだと思う。視点が違うと当然見え方も違ってくるのだ。「訳者あとがき」のp250によると、ドイツでは1963〜65年に「アウシュビッツ裁判」が開かれ、ドイツ人自らがドイツ人の戦争犯罪を裁いたという。
翻って日本を省みると、日本人自らが太平洋戦争を法廷の場で裁こうという試みは、未だ行われたためしはない。