しいたげられたしいたけ

建築家は外装の失敗をツタで隠し、料理人は味付の失敗をマヨネーズで隠し、政治家は内政の失敗を戦争で隠す

小林標『ラテン語の世界―ローマが残した無限の遺産』(中公新書)

ラテン語の世界―ローマが残した無限の遺産 (中公新書)

ラテン語の世界―ローマが残した無限の遺産 (中公新書)

私的五つ星。変な言い方だが、ラテン語を覚えるつもりがない人間にとっての、格好のラテン語紹介書。著者に失礼な言い方かな?(^^;
しかし文法的な説明は最小限だから、この本を使ってラテン語をマスターすることはできない。その代わり内容は多岐にわたり、ローマ帝国史の概略、ラテン語文士・詩人の列伝、中世から近世〜現代に至るラテン語の数奇な運命などの話題が取り上げられる。
文法については、ラテン語の造語力がいかに強力であるか、そして英語などヨーロッパ諸言語が、語彙を増やすにあたっていかにラテン語の力を陰に陽に借用しているかの説明に、多くのページが割かれる。
ラテン語を使用した著名な著作者について、恥ずかしながら私は、散文のキケロ、詩のウェルギリウス、スコラ哲学のセネカらの名こそ知っていたが、彼らの生涯や作品についてほとんど知るところがなかった。それから『ガリア戦記』のカエサルについては、考えてみれば歴史上の軍事的英雄で、その母語に対しても重要な寄与をなした人物というのは、ほかにいるだろうか?本朝で言えば織田信長が『徒然草』か『奥の細道』を著したようなものではないか!かろうじて魏の曹操が同時代の最高の詩人でもあったと言われるのを思いつくぐらいである。
こういう本を読むと、むらむらとラテン語も勉強してみたくなる。しかし考えてみれば私はそうやって結局モノにならなかった言語を何ヶ国語かじったことだろう(どれも挫折するのも早かったorz)。今に至るも執念深くかじり続けているのは、英語と、大学の教養時代以来のドイツ語くらいのものだ(あと韓国語も、もっとやりたいとずっと思い続けている。それから…いかん、これぐらいにしておこう)。英語もドイツ語も、ものすごく魅力的な言語だということは、よくわかっているので、かき立てられたパッションはそちらの方に注力することにするか…