しいたげられたしいたけ

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中島義道『カントの人間学』(講談社新書)

カントの人間学 (講談社現代新書)

カントの人間学 (講談社現代新書)

ん〜、これは期待はずれだったかな?著者はベストセラーを連発して2ちゃんねるあたりではボロクソに書かれているけど(ま、2ちゃんねるで悪く書かれていない人を探すほうが難しいが)、カントを30年読んできたというだけあって、哲学をわかりやすく書く力は確かだと思う。そのことは、本書中に夥しくちりばめられたカントその他の引用文と、それに対する著者の解説文を読み比べれば、すぐにわかる。カントの文は読めやしないのだ。だが著者の解説を読めば、わかったような気にはさせてくれる。
だけど、私のような怠惰な読者が期待するのは、カントの思想のエッセンスであって、カントに友人が少なかったこと、特に「親友」と呼ぶにふさわしい友人は皆無だったこと(「第三章 友情について」)だとか、少年時代が不遇で出世も遅かったこと(「第四章 虚栄心について」)だとか、「時計のように正確な日課の毎日を過ごした」という有名なエピソードは、実はカントが63歳を過ぎて初めてマイホームを手にして以降のことだったということ(「第五章 生活のスタイルについて」)だとかではないのである。いや、それはそれで面白いとは思ったけど。
ま、それを著者にこぼしたら「自分自身の力で格闘しないでカントが理解できるか!?」と一喝されるであろうが。
余談ながら、私のような軟弱な読者にも「カントって面白そうだ」と思わせてくれた本を一冊挙げるとすれば、石川文康『カント入門 (ちくま新書)』である。