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酒井邦嘉『科学者という仕事―独創性はどのように生まれるか』(中公新書)

科学者という仕事―独創性はどのように生まれるか (中公新書 (1843))

科学者という仕事―独創性はどのように生まれるか (中公新書 (1843))

予想外に(失礼!)面白くて、読み出したら止められなくて一気読みしてしまった。私的五つ星。
著者は脳科学者で、同じ中公新書に『言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか (中公新書)』という一般向けの本もある(こちらもよかったですよ)。だが、専攻は違うが学生時代からアインシュタインをこよなく尊敬しており、本書中にもアインシュタインの著作から引用が多数、並ぶ(巻末にアインシュタイン、チョムスキー、キュリー夫人らの引用文が原文のドイツ語、英語、フランス語等で示されているのも、本書の特徴である)。なるほど、専門は違っても偉大な科学者から学ぼうとする姿勢を持ち続けるというのはアリなのだと、目からウロコがおちる思いだった。ここのところ物理学の一般向け解説書をいろいろと読んでいるのだけど、正直「いまさらこんな本を読んでも物理学者になるわけでもなし」と思わないでもなかったので、迷いがふっきれた気分である。ところで私の専門って何なんだ???
「科学者」になるには、実は資格も何も要らなくて、極端な話、名刺に「科学者」と刷り込んで(そんな怪しいことする奴いるのか?いやいそうだな)科学者を名乗れば誰でも科学者だ。しかしポストだの研究費だの、先立つモノを得ようとすると、アカデミズムの世界独自の「しきたり」つーかプロトコルを、きっちりと踏まえなければならなくなる。サルトルの有名な言葉をもじった、タチの悪いジョーク。
先生「哲学を学びたいと思ったら、このカクテルグラスからだって学ぶこともできる」
弟子「ではカクテルグラスさん、私にどこかよい教職を世話してください」
鷲田小彌太『大学教授になる方法 (PHP文庫)』なんぞは、そのあたりの事情を理不尽さも含めてシニカルなタッチで描いた本であり、それはそれで大いに参考になった。だけど、科学に対する著者の情熱が素直に伝わってくるという意味で、特にもし自分で読むのではなく若い学生さんに一読をすすめるとしたら、こちらかなという気がする。
言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか (中公新書)

言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか (中公新書)

大学教授になる方法 (PHP文庫)

大学教授になる方法 (PHP文庫)