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E・T・ベル、河野繁雄(訳)『数学は科学の女王にして奴隷 2 科学の下働きもまた楽しからずや』(早川文庫)

数学は科学の女王にして奴隷〈2〉科学の下働きもまた楽しからずや (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

数学は科学の女王にして奴隷〈2〉科学の下働きもまた楽しからずや (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

数学とか物理学とか自然科学のすごいところは「予言をする」ということだが、その事実は初めからあっさりと人類社会に受け入れられたわけではないらしい。本書第13章によると、イギリスのJ.C.アダムズは、ニュートン方程式に基づいて、天王星の軌道の理論値と観測値のズレから、海王星の存在を割り出したが、当時の王立天文台の責任者が、アダムズによる天空の「月三個半の広さのある部分を探してほしい」(本書p144)という要請を無視したため、海王星の発見は遅れ、アダムズは単独での「海王星の発見者」という名声を逃がし、彼とは独立に海王星の存在を割り出したフランスの数理天文学者ルヴェリエとそれを分かち合うことになったという。
もっとも著者は米国籍だがイギリスのスコットランド出身だから、同じイギリス人のアダムズ寄りの記述をしているのかも知れず、ルヴェリエにはルヴェリエのドラマがあったのかも知れない。
なお、マクスウェル(本書での表記はマックスウェル)による電磁波の予言は、本書では第17章で登場する。第16章にはハミルトンによる円錐屈折という光学現象の予言に関する言及があるが、私はこちらは全く知らなかった。残念ながら本書からはあまり詳しいことはわからない。