しいたげられたしいたけ

空気を読まない。他人に空気を読むことを要求しない

須田慎一郎『下流喰い―消費者金融の実態』(ちくま新書)

下流喰い―消費者金融の実態 (ちくま新書)

下流喰い―消費者金融の実態 (ちくま新書)

本当かよ、これ!?Σ(゚Д゚;)私的に文句なしの五つ星。
とにかくまずは本文の引用から。脳梗塞で倒れた夫(63歳)を介護する女性(58歳)のところに掛かってきた回収担当者からの電話の録音。電話口に出ているのは、女性に自己破産を勧めていたボランティアの男性である(p29〜30)。

アイフル社員(以下、省略)「……だからさァ、破産を撤回するというね、文書を送っ
てほしいんだよ」
―いや、破産を撤回するって何を……。
「とにかく!本人(債務者の女牲)を電話口に出してよ。電話させてよ」
―それは間違いだよ、アイフルさん。
「撤回する文書を出せ!そっちから」
―ずいぷん乱暴だね。アイフルっていうのは、もっと……。
「カンケーねえだろっ」
―いや、もっと紳士的な会社だと思ってたよ。
サラ金なんだから。あーっ、しょせんサラ金。だいたいあんたたちにね、間に入る
筋合いはないの、うちには」
―いや、筋とかじやないの。だから間に入ってるわけでもないんですよ。こっちへ
いらっしやいよ。ちゃんと説明してあげるから。
「ああーっ?おたくから来いよ」
―なんで私が行かなくちゃいけないわけ?
「お前が来いよ!」
―お前が来いよとかさ、さっきからあなた、失礼な話ばっかりだけど……。
「だから、おたくが立ち入る権利がないってんだよ」
―撒回とか何を言ってるのよ。
「人をバカにすんじゃねえよ!ぱかたれーっ」
―そんな感情的になんなさんなよ。
「感情的にしてるのは、おたくだろうがーっ。アタマにくんだよ、ほんとうに」

なおこの女性は自己破産しないまま、後日、失踪してしまったという。
'05年6月に米国の雑誌「フォーブズ」に掲載された日本の富豪リストの、二位にアイフル社長、三位に武富士前会長、五位にアコム会長がランクインされた(p15)ことが象徴的に示すように、消費者金融は我が世の春を謳歌しているかのようだが、その背景には「グレーゾーン金利」(「利息制限法」と「出資法」という二つの法律で定められる上限金利が相異なっているのを利用して設定された高い金利)、や「押し貸し」(消費者が求めないのに「あなたが利用できる枠は○万円まであります」と甘言を弄して借金させること)など、法の間隙を突いた手口が跋扈しているという現実があり、著者はそれを「悪魔のビジネスモデル」という、この上ないきつい表現で断罪する。
大手消費者金融以外にも、「ヤミ金」と呼ばれる、はっきりと違法な営業をおこなっている業者が存在する。第四章では、'03年6月に大阪八尾市で六十代の夫婦と妻の兄(八十代)の三人が鉄道自殺した事件をきっかけに、警察に摘発されたヤミ金組織の実態にせまっている。
自殺した妻は、ヤミ金から一万五千円を借り、その後43日間で出資法の上限金利29.2%の約270倍にあたる十三万五千円の利息を支払わされたが、元本は減らず催促の電話が夫婦のアルバイト先から妻の兄の自宅に一日中かかっていたという(p150〜151)。
ヤミ金組織の幹部クラスの月収は数百万円で、運転手つきの高級外車を乗り回していたそうである(p155)。
この事件に関わった業者グループは、別の出資法違反容疑も含めて'06年3月までに二十六人が逮捕されているというが、三十九歳の組織のトップや八尾の事件でリーダー役を務めていた二十五歳の男は、今も逃亡中だという(p156)。
ジョジョの奇妙な冒険』の第一部だったかに、こんな意味の言葉があったと思う。
「老人が自殺する国はまもなく滅ぶ」
周知の通り日本の自殺率は世界でも有数であり、高齢者ほどその割合は高い。