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大瀧啓裕『エヴァンゲリオンの夢―使徒進化論の幻影』(東京創元社)

エヴァンゲリオンの夢―使徒進化論の幻影

エヴァンゲリオンの夢―使徒進化論の幻影

エヴァンゲリオン解読―そして夢の続き』でしきりに言及されているので、読んでみた。つか『エヴァンゲリオン解読―そして夢の続き』にあまり満足できなかったことは11-12に書いた通り。
著者はラヴクラフトなどを訳している翻訳家。西洋神秘主義にやたらと詳しい人らしい。430ページニ段組という、かなりの分量を持つ本書の内容は、エヴァに登場する語句の解説、エヴァTVシリーズ前26話(プラス劇場版)のかなり詳しいストーリーの紹介、そしてエヴァ世界の謎解きを三本柱とする。
いや〜、著者の知識量には圧倒されるわ(^^; 私だって、聖書などに関する一般常識程度の知識は持ち合わせていたつもりだし、西洋神秘主義については河出文庫に入っている澁澤龍彦を何冊か読んだことはあったが、そんなもんでは全然歯が立たないことがよくわかった。
著者は、英独仏西に加えて、ラテン・ギリシャの古典語までこなすようだ(いや、欧米系の人文科学専攻の人に、たまにそういう人がいることは知っているのだが。リアルの知人に東大教養学部出身のそういう男がいた)。
のみならず、著者の言葉に対するこだわりは、すごい。ほんの一〜二例だが、著者は「ヤマアラシのジレンマ」を解説するのに、ショーペンハウアー『余録と補遺』とフロイト『集団心理と自我の分析』にまで遡る(p84)。また、ネルフのマークに引かれているブラウニングの詩の解説では、比較的有名と思われる上田敏訳を完全スルーして、原典の『ピッパが通る』という劇詩を紹介する(p312)。恥ずかしながらっつーか当然ながらっつーか、私は『海潮音』は読んでいたが『ピッパが通る』はタイトルすら知らなかった。
そのわりに、ふつうの言葉の用法に荒さが目につく。ちょっと思い出せるだけでも、「役不足」を月並みにも「力不足」の意味で誤用していたり、「フィードバック」を「復帰」の意味で使ったり(p136)、月の軌道に届く初速を「第一宇宙速度」と言ってみたり(第二宇宙速度=脱出速度が必要です。p312)、英語を「膠着語」と言ってみたり(屈折語だ。p313)、いや、学者肌の人物には、そういうことはあるものなのかも知れない。
そんなわけで、たとえば第弐拾四話で渚カヲルが口にする「リリン」というのが、創世記に先立つ古代バビロニアの神話伝説に現れた女性形のデーモン「リリス」の子で、「リリス」とは元々アダムの伴侶としてアダムと同時に創造されたが、創造主=神の意思に背いてアダムのもとを立ち去りデーモンと同衾して子を産み続ける存在(アダムには代わりにアダム自身から創造されたエヴァが与えられた)なのだと説明される(p357〜358)と、私のようなドシロートの視聴者でも、ようやく「なるほど!」と膝を打つ。ただし人類をリリンと呼ぶのはリリスの神話伝説とは異なっているそうで、エヴァ世界のオリジナルだそうである。
だが、「ONE MORE FINAL」に関して、「はじめに」はじめ本書中の何箇所かで謎解きの予告をしておきながら、巻末も巻末のp427に至って「考えるためのヒントは本書の中にあるので、これだけはあえて解釈せずにおく。」などと宣言されると、やってられるか〜!と叫びたくなる彡(ノ`Д´)ノ ┻━┻.゚:゚・