しいたげられたしいたけ

空気を読まない。他人に空気を読むことを要求しない

丸山勇『カラー版 ブッダの旅』(岩波新書)

カラー版 ブッダの旅 (岩波新書)

カラー版 ブッダの旅 (岩波新書)

新書版ながら、全編カラーの写真集。
本文はブッダの伝記。誕生から、出家、苦行、成道、布教、入滅までがオーソドックスに辿られ、例えば『仏教 第2版 (岩波新書)』の記述とだいたい重なる。
本書の特徴は、王舎城(ラージャグリハ)、象頭山(ガヤー・シーサー山)、鹿野苑サールナート)、霊鷲山(グリドラクータ)、祇園精舎(ジェータヴァナ)など仏典で名高い地名の現在の姿が、ふんだんなカラー写真で紹介されていることである。
ジェット機とオフセット印刷技術の時代に生きるありがたみではあるが、一方で、現物を知らないで「霊鷲山」なら「霊鷲山」という字面だけを眺めたときに脳裡に生じる、何と言うか「浄土に近い場所」というイメージと、現実の荒涼とした岩山の写真を見せられたときの「地球のどこか一箇所」というイメージとの落差に、戸惑いを感じないではいられないという面もある。
阿弥陀如来みそなわす極楽浄土も、薬師如来みそなわす浄瑠璃浄土も、もはや地球上には存在する余地がなくて、物理的に牽強付会するのであれば、もはや「別の泡宇宙」ぐらいにしかその置き所を見出せないのではないか。なに、泡宇宙同士が物質的には完全に断絶していても、霊魂や精神であればその垣根を乗り越えることは可能なのであろう。多分。知らんけど。