しいたげられたしいたけ

空気を読まない。他人に空気を読むことを要求しない

久しぶりに推理小説を二冊

いずれも古いのです。

高木彬光『幻の悪魔』(角川文庫)

幻の悪魔 (角川文庫 緑 338-48)

幻の悪魔 (角川文庫 緑 338-48)

弁護士事務所に飛び込んできた男が、弁護士の帰りを待っている間に毒死し、引きちぎられたトランプのカードを持っていたというのが発端。
ところが、なぜか読んでいてぜんぜん面白みを感じないのだ。「全身に刺青をした謎の女」(著者得意のアイテムだな)だとか、「旧満州で日本軍が関与した麻薬シンジケート」だとか、「旧宮家を名乗り巨額の資金をちらつかせる詐欺師」だとか、派手な道具立ては数々登場するのだが、言っちゃ悪いが「だから何なの?」という感じだし、またいずれもラストでこぢんまりと決着がつけられているという印象だった。
ひょっとして自分の感性が衰えたのかな、と少し心配になって、もう一冊読んでみた。

高木彬光『死神の座』(角川文庫)

こちらは再読。神津恭介シリーズで、著者の傑作と言われているものの一つらしい。神津恭介が軽井沢に向かう列車に乗り込んだところ、同行するはずだった友人は現れず、代わりに友人の予約席には、奇妙な若い女が着席し、一方的に占星術の話ばかりを始める。さらに女は、途中駅で席を立つと、ホームの立ち食いそば屋でそばをすすっていた男に平手打ちを食らわせて姿を消す。そして到着した軽井沢のホテルでは殺人が…といった発端。
再読だけあって犯人が誰かとかは覚えていたのだが、細かい筋立てはすっかり忘れていたので、それなりに楽しめた。「なぜ同行する予定の友人が現れなかったのか」、「女の奇妙な言動の理由は何か」など、ふんだんにばら撒かれた謎には、それぞれちゃんと説明がつけられる。
同じ作者の書いたものでも、出来不出来というものはあるのだろう。私の好みに合う合わないというだけの問題かも知れない。