🍉しいたげられたしいたけ

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福岡伸一『生物と無生物のあいだ 』(講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」
(第一部)http://urasoku.blog106.fc2.com/blog-entry-217.html
〜(完結)http://urasoku.blog106.fc2.com/blog-entry-243.html
が面白いと感じた人は、ぜひ本書も読むべきだと思います。絶対に面白いと感じるはずです。
奇をてらったような言い方かも知れませんが、「ブラック会社…」で語られる中小ソフトハウスも、本書で描かれるハーバード大学医学部の研究室も、いろんな意味でそっくりのような気がしてなりません。奴隷に比せられる仕事のハードさ、人間関係はじめ様々な理不尽さ、生き馬の目を抜く競争の激烈さ、そして一つの仕事に打ち込むことの尊さなど。
著者の文章力は抜群です。関連分野の(少し古い本ですが)立花隆&利根川進『分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか 精神と物質 (文春文庫)』も読みやすかったですが、本書は自ら第一級の研究者である著者の単独著書であることに驚かされます。ただし「セレンディピティ(serendipity:価値のあるものを探しあてる直観力)」のような単語が、注釈なしで登場することに困惑させられることはありますが。
本書で語られる著者の研究テーマは、「膵臓の細胞が消化酵素を生成する際には、細胞内で小胞体と呼ばれる小さな風船のようなものが作られ、その内部で消化酵素が何段階ものプロセスを踏んで生成され、消化酵素が完成すると小胞体は細胞の外側を包む細胞膜とつながって消化酵素を外部に放出するが、どのようなメカニズムでこのような複雑な動作が実現されているのか」というものですが、全280ページあまりの本書の前半200ページを費やして、この研究テーマが提示されるに至る先人たちの業績が語られます。それを読むことによって、読者は著者の専門に関するおおまかな知識を得、研究に使われる道具立てを知り、なぜこの研究テーマが研究者たちを魅了するのかを理解することができます。
科学というものが、このような途方もない積み上げの上に成立していることに驚かされます。また自分が、自分の体の内部で現に進行していることについて、何一つ知らないことにも…
分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか 精神と物質 (文春文庫)

分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか 精神と物質 (文春文庫)