しいたげられたしいたけ

空気を読まない。他人に空気を読むことを要求しない

桜井邦朋『宇宙物理学入門』(講談社ブルーバックス)

宇宙物理学入門―宇宙の誕生と進化の謎を解き明かす (ブルーバックス)

宇宙物理学入門―宇宙の誕生と進化の謎を解き明かす (ブルーバックス)

宇宙関係の本を、もう一冊読んでみた。今度は新しめのを選んで。初版2007年5月。奥付の日付が内容を決めるわけはないが。
ここまでわかった宇宙の謎 (講談社+α文庫)』は、いかにも一般向け読み物という感じだったが、本書は、読み物には違いあるまいが、タイトルの通り宇宙物理学を志す(あるいは宇宙物理学に興味を抱く)理系の学生を意識して書かれているのだろう、いかにも手堅いと言うか、オーソドックスな宇宙物理学の方法論が述べられている。
まず全天の恒星の一つ一つに対して、明るさ(等級)を測定しスペクトル分析を行う。波長分布から表面温度を、吸収線(暗線)から構成元素を知ることができる。さらに年周視差を利用した三角測量などさまざまな方法を用いて、恒星までの距離を割り出し、絶対等級を計算する。
このようにして集めたデータを、表面温度と絶対等級をグラフにとると(いわゆるHR図)、「主系列星」・「赤色巨星」・「白色矮星」の三つの系列が姿を現す(p47〜)。
いやはや、宇宙物理学とは、このような地道な観測の積み重ねによる膨大なデータと、相対性理論量子力学の理論を駆使して、ガッチリと組み上げられた体系なのだ。ビッグバンやブラックホールなど、素人受けしやすい宇宙の奇抜な登場人物たちは、こうした体系の中から登場したもので、トリックやケレンとはなんら縁のない存在なのである。まあそりゃそうに違いないけど、なんだろうこの不思議な感覚は…
こうして近年の宇宙物理学は、次々と未知の事実を明らかにしていっているのだが、それで宇宙の謎は解明に近づきつつあるかというと、それどころか新しい謎もまた次々と見出されているのだそうだ。例えば1998年に遠方の超新星の観測から、宇宙が加速しつつ膨張しているという事実が明らかにされたという(p160)。宇宙を加速しながら膨張させるエネルギーのことを「暗黒エネルギー(ダークエネルギー)」(p160)と呼ぶそうだが、どんな言葉を使っても表現できそうにないケタ外れに巨大なそのエネルギーの正体って何?