しいたげられたしいたけ

空気を読まない。他人に空気を読むことを要求しない

芝健介『ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌』(中公新書)

ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌 (中公新書)

ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌 (中公新書)

えらい本を読んでしまった。だいたいタイトルからして読んで楽しくなる本でないことは明白なのに。
行き着くところは周知のアウシュヴィッツを始めとする「絶滅収容所」なのだが(本書は「絶滅収容所」と「強制収容所」を区別している。p164〜。そして前者6箇所のリストをp196に、「基幹強制収用所」13箇所のリストをp169に掲げている)、ヒトラーの政権掌握以前は、ユダヤ系市民たちは公務員や軍人としての職を有する者もあり、他の市民と変わらぬ生活を営んでいた。彼らが公職追放を皮切りに、次々と権利や財産を奪われていくプロセスをたどっていくと、「なんでこんなことが可能だったのだろう?」と疑問を感じないではいられない。
ゲッペルスゲーリングヒムラー、ハイドリヒ、ハンス・フランク、アイヒマンといったナチス政権の要人達は、写真つき横組みコラムで略歴を紹介されているが、それ以外にもユダヤ人迫害政策に関わった人物の膨大さよ!この類の本を読むたびに、あまり好ましくない意味での彼らの陣営の人脈の幅広さ、多士済々さに驚かされる。
いや、実生活で、思い当たるところが皆無とは言えない。多分この人は「タカ派」と言うか「保守派」なんだろうなと思われる人物と話していると、何の脈略もなく、障害者や外国人や社会的弱者に対する容赦のない攻撃のような、ギクリとする話題を振ってくることがある。ジョークを装っている場合もある。リトマス試験紙のようなもので、こちらがニヤリとでもしてそれに応じれば、「話のわかる奴だ」あるいは「仲間だ」とでも思ってもらえるのだろうか?そうやって彼らは人脈を広げているのだろうか?お生憎様、あなたが話している相手は、外見上は五体満足でも精神的には「障害者」の部類であり、戸籍上は何代遡っても日本人であっても内面的アイデンティティはétrangerなんですよと教えてやりたいところではあるが…