しいたげられたしいたけ

空気を読まない。他人に空気を読むことを要求しない

尾木直樹『バカ親って言うな! モンスターペアレントの謎』 (角川oneテーマ21)

モンスターペアレント本がいっぱい出版されているが、類書の中から本書を選んだのは、個人的にはこの著者が一番信頼できると思ったからだ。私が未読というだけで、他の本の著者の中にも信頼できる人はいるだろうけど。
果たして期待は裏切られなかった。読んでいて「数値化が欲しいな」と思うと、独自調査によるアンケート結果が載っている(第二章)。「教師の立場からの視点ばかりだが、それでいいのだろうか?保護者の立場から見ると「売り言葉に買い言葉」という感じでつい出てしまった言葉が、都合よく取り上げられて独り歩きしているだけということはないのか?」と疑問を感じると、親の側から見た「問題教師」の話題も論じられている(第三章)。解決に向けた具体的な提言はないのか、と思っていると、後半の第四章・第五章はまさしくそれに充てられている。『三国志』で敗走する曹操が「孔明もたいしたことない。私が軍師なら、まさしくこの場所に伏兵を残しておくのに」とひとりごつたびに、趙雲張飛関羽ら蜀の武将が次々と手勢を率いて現れるシーンを見ているようだ…って比喩がわかりにくいですねすみません。
いわゆるモンスターペアレントのとんでもない言行録って、箇条書きみたいにされたものを読んでいるだけで、不謹慎だが面白いし、それで何かがわかったような気になってしまう。しかしそれじゃ何の解決にもなっていないのだ。学校というのは案外閉鎖された空間であって、教師という職業の人間と実社会で向き合うと「よくこんなのが社会人やってられるな」とあきれることも実際たまにある。初対面なのに上から目線でしゃべってきたりね。
第五章で著者が示す解決に向けた具体的な提言は、せんじつめれば教師と親、学校と社会の正常なコミュニケーションの確立ということだと思う。逆に言えば「学校の権威」という虚構で隔てられて互いに孤立していた学校と社会が、もっとましな関係を構築しようと試行錯誤を始めて現れだした諸現象のうち、極端なものが「モンスターペアレント」と呼ばれているのかも知れない。
第四章では安倍内閣時に設置された教育再生会議が考えた「学校問題解決支援チーム」なるものが論じられているが、著者の論調は懐疑的である。まあそりゃそうだろう。「チーム」の人員構成には「警察官OB」などが想定されているが、警察は学校以上の「権威という虚構に隔てられた閉鎖社会」ではないのか?これが「警察の組織こそを風通し良くしよう」という逆説だというのなら、まだ理解できないでもないが。