しいたげられたしいたけ

人権を守るには人権を守るしかない。人権以外の何かを守ることにより人権を守ろうとする試みは歴史的に全て失敗した

尾木直樹『教師格差―ダメ教師はなぜ増えるのか』(角川oneテーマ21)

同じ著者の『バカ親って言うな! モンスターペアレントの謎 (角川oneテーマ21)』が良かったから読んでみた。予想したとおり、『バカ親…』の姉妹編といった趣(出たのはこちらが先だが)。「モンスター教師ありてモンスター親あり」とでも言うべきか、世間の常識から隔絶したとんでもない教師が次々に描かれる。しかし多数派の教師が、長時間勤務など劣悪な条件下で自己の職務を果たそうと奮戦する様子にも、きちんとページが割かれている。
常識をわきまえないとんでもない教師の出現と、教師の負荷の過重化というそれぞれの現象に共通する一因子として、著者は、教育現場への「競争原理」の導入を指摘する。以前は教員同士で相談し合い、支えあう環境が(十分と言えるかはともかく)存在したのだが、「制度改革」により従来のお互いがイーブンの関係から「ピラミッド型」に変えられつつあることによって、そういった雰囲気がさらに希薄になり、バラバラにされた教師がトラブルに直面したときに助力を期待できる相手もなくトラブルを一人で抱え込んでしまう傾向が強まっているのだそうだ。
著者は、安倍内閣の設置した教育再生会議による論議や提言を、時に「怒りを越えて辟易としている」「考え方の相違にもならぬ「床屋談義」のレベル」と、かなり強い調子で批判する(p26)。まあそりゃ外部からの提言を「現場を知らぬ」と一律に切り捨てることは、社保庁のような誰の目にも問題ありありの組織の自己保身に都合のよい理屈ともなりうるが、本書で言えば「第三章 教師の条件」でかなり詳細に述べられる教育現場における生徒と教師の相互信頼関係などは、(引用し始めたらきりがなさそうなのでやめておくが)長い時間をかけて培われたものであろうことは明らかで、失われるとしたらあまりに惜しいものである。
なんとなくここでも、「飢餓状態にある病人に糖尿病患者用ダイエットを押し付ける」ような誤った処方箋が遂行されているようで、ページをめくるごとにどんどん気が重くなった。
追記:(7/25)
知人から聞いた話。学校の先生方の負荷は、今、すごいことになっているのだそうだ。
いわゆる「調査漬け」という状態なのだそうだ。
文科省に提出する書類の作成に追われて、土日もほとんど休めない状態が、年度始めからずっと続いているのだという。