しいたげられたしいたけ

空気を読まない。他人に空気を読むことを要求しない

「海賊と金貨」のパズル(ルール追加)

「基本形」「海賊の人数より金貨が少ないケース」の続きで全3回の3回目。つまり最終回。
追加するルールは、以下の通り。
(6)海賊同士のグループを作ることを認める。
(7)グループに加入している海賊に関して、金貨はグループ単位で配分され、投票はグループでまとまって人数分だけ同じ票を投じる。
(8)海賊のグループにはボスがいる。グループの中で一番腕力のある海賊が、グループのボスになる。
(9)ある海賊PnがグループGmに加入する条件は、海賊PnとグループGmのボスの双方が合意することのみである。海賊Pnは、グループGmに加入することによって自分の分け前が増えることが期待できれば、加入を希望する。グループGmのボスは、海賊Pnを加入させることによって自分の取り分が増えることが期待できれば、海賊Pnの加入を認める。
(「双方の合意」というのは、結婚から国際条約まで、「契約」の基本中の基本なのだ)
この条件で、海賊の人数n=5のケースを考えてみよう。
ボスP1は、P3とP5って誘いグループG1を作り、自分がG1のボスになる。
さらにP3かP5のどちらかだけを誘ってグループG2を作り、やはり自分がG2のボスになる。
以下ではボスP1はP5を誘いP1とP5でG2を作ったとする。

金貨が100〜3枚のケース

ボスP1はグループG1の総取りを提案し、G1のメンバーに賛成票を投票させる。この分配案は3対2で可決される。
グループG1内で金貨は、P3とP5に1枚、残り全部はボスP1に分配される。
(これはグループを作らなかった場合と同じ結果になる)

金貨が2枚のケース

ボスP1はグループG1の総取りを提案し、G1のメンバーに賛成票を投票させる。この分配案は3対2で可決される。
グループG1内で、G2のボスでもあるP1はグループG2の総取りを提案する。この分配案は2対1で可決される。
金貨はボスP1とP5で一枚ずつ分けあう。
(グループを作らなかった場合は、P3とP5に一枚ずつ)

金貨が1枚のケース

ボスP1はグループG1の総取りを提案し、G1のメンバーに賛成票を投票させる。この分配案は3対2で可決される。
グループG1内で、G1のボスでもあるP1はグループG2の総取りを提案する。この分配案は2対1で可決される。
グループG2内で、G2のボスでもあるP1は自分が金貨を取ることを提案する。この分配案は1対1だが腕力はP1>P5なので可決される。
(グループを作らなかった場合は、どのように分配してもP1が処刑される可能性が高い)
ただし、純粋な理屈だけでいけば、金貨の枚数が1枚だろうと100枚だろうと何枚だろうと、ボスP1はいつも総取りにできる。しかし、もしそうしてしまうとP1をボスとするグループに入りたがる理由が誰にもなくなるだろう。ルールを追加して、海賊PnがボスP1のグループに入ることを希望する「期待値のしきい値」を決めるといいのかも知れない。
理詰め(と自分では思う)の分析は、以上でおしまい。以下は得られた結果に対する考察つか雑感。ざっと思いついた海賊社会の特徴を並べてみる。
・富は集中する。
・ボスはもっとも実力(=腕力)があることが要求されるが、ボスのグループに入るには必ずしも実力がなくてもよい。
・富を集中させようとすればするほど「階級」ができる。それと同時に「野党」ができる。
「階級」というのは説明が必要かもしれない。グループG1もグループG2も、いったん成立するとメンバーが固定されるということである。
もし海賊の人数が100人であれば、ボスは奇数番の49人をさそって50人のグループG1を作るだろう。さらにグループG1内で25人のグループG2を作るだろう。同様に13人のG3を、7人のG4を、4人のG5を、2人のG6を作るだろう。
(海賊の人数が多ければ多いほど、ボスがグループを作るメリットはさらに大きくなる。海賊が100人だったとする。もしボスがグループを作らなければ、金貨が49枚の時には自分の取り分がゼロになる。金貨が48枚以下だったら、処刑される可能性が高い。しかしグループを作っておけば、処刑のリスクが回避できるのみならず、49〜1枚のいずれの場合でも常に自分の取り分を確保できる)
司馬遼太郎なんかを読むと、江戸時代の「階級」は、幕府直参も諸藩の藩内においても侍以外を含む社会全体でも、複雑を極めたようなことが書いてある。軍隊の階級も、整理されているとは言えやたらと数が多いよね。現に我々が今生きている社会においても、会社組織を見れば、アルバイトやパート社員がいて、派遣社員がいて、平社員がいて、部課長会というのがあって、取締役会があって…また会社同士が旧財閥系とか金融系とかで企業グループを作ったり、「本社」-「子会社」-「子会社の子会社」…というピラミッドを構成したりしている。ついそういうことを連想してしまう。
今後、ちょっと興味があるのが最後の三点目である。海賊の人数が増えてゆき、獲得する金貨をランダムに与えると、ときどき「革命がおきる」という事態が発生するんじゃないだろうか?つまりは「ボスが処刑される」ということなんだけど、ボスが処刑されると「階級」は一気に入れ替わる。
ルールは単純なので、シミュレーションのプログラムは目下の私の実力でも作れるかも知れない。
人数とか金貨の枚数とか、パラメータをいろいろ変えてシミュレーションを繰り返すと、何か面白い現象が見つかるかもしれない。
ここで、最初の段階に立ち返っての疑問が生じる。「金貨を平等に20枚ずつ分ける」という選択肢をあえて選択するというのもアリだったんじゃないのかね、ということである。このパズルの世界の住人である海賊たちの大多数(多分ボスを除く全員)にとっては、その方が幸せだったんじゃないかと思わずにはいられない。それが現実社会とどう対応するかには、あえて言及をさけることにする。