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中島らも『心が雨漏りする日には』(青春文庫)

心が雨漏りする日には (青春文庫)

心が雨漏りする日には (青春文庫)

鬱発症を記念して(そんな記念いらんわ!)、何かの参考になるかなと思って、久しぶりにらもさんのエッセイを読んでみた。
直接の参考になった点はと言えば、「クスリを飲むと楽になる」という、すでに自力で発見済みのことくらいだったが、読んでいて純粋に面白いわこの人のエッセイは!
一部、引用。

 うつ病が寛解して思ったのは、人間の心というものはなんとも簡単に病んで、なんとも簡単なことで治るのか、ということだった。怪我が治ったり、風邪が治ったりするのとまったく違った、一種の口惜しさのようなものがそこにはあった。
 うつ病の異常なまでのつらさ、それが薬であっさり治ってしまうことに対する口惜しさ。

(p54)
満腔の同意を表する!
ドストエフスキーに、虫歯にかかり治療を拒否してもだえ苦しむ人物が登場する作品があるという。どの作品なのかは知らない。その気持ちは今なら理解できるような気がする。いや、自分がもし虫歯になったら歯医者に行くけどね。またもしこのエントリーを読んでいる人で「自分も鬱かな?」と思った人がいたら、全力で受診をお勧めします。
それはさておき、この人の場合、いつもやることが極端なのだ。本書p167〜169あたりに、著者が常用していた一ダースほどのクスリのリストがあるのだが、食の細い著者のこと、一日一食の普通の食事以外は「酒で流し込んで」いたのだそうだ!そしてリストの過半には「※禁酒」の注意書きが踊る。
読んでいてハラハラドキドキである。つか「い〜けないんだ いけないんだ♪せ〜んせ〜に ゆ〜てやろ♪」な気分である。そういうことをすると、どうなるかというと…詳しくは本書を参照してもらうしかないが、一点のみ、字が読めなくなったのだそうだ。字が読めないということは、書けないということで、後期の代表作『こどもの一生』はじめ何冊かの小説やエッセイは、口述筆記で奥さんが書いたのだそうだ(p163〜164)。
私の場合、クスリの服用を始めたばかりの頃、文字をいくら目で追っても頭に入らないと感じることがあった。実は内心「自分の知的生産性はこれでジ・エンドか?」(そんなもんありゃせんわという突っ込みは黙殺する)と軽い絶望にかられたが、何もしなくても症状はほどなく解消された。本当にクスリの副作用なのかどうか、またどういうプロセスによるものなのかは知らない。
本書を読んでいると、自分がいかに小さいことでうじうじと悩んでいたかとバカらしくなる。人間は簡単には死なないのだ。らもさんは死んじゃったけど(不謹慎なオチですいません。でもなんとなく、らもさんなら許してくれそうな気がしたのでm(_ _;m)。
追記:
怖いのは鬱より躁の方かなという気もする、本書を読む限り。