しいたげられたしいたけ

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安能務『隋唐演義』(講談社文庫)

隋唐演義〈上〉 (講談社文庫)

隋唐演義〈上〉 (講談社文庫)

隋唐演義〈中〉 (講談社文庫)

隋唐演義〈中〉 (講談社文庫)

隋唐演義〈下〉 (講談社文庫)

隋唐演義〈下〉 (講談社文庫)

隋唐演義田中芳樹版も出ているが、私は安能版を読んだ。
長らく南北に分裂していた中国を隋の文帝が統一したところから始まって、煬帝の悲劇、大唐帝国の成立と玄武門のクーデターによる太宗の全権掌握、中国史上唯一の女帝=則天武后の即位と退位、玄宗皇帝の即位と安禄山の変の勃発から鎮圧までという、なんとも歴史イベントがてんこ盛りの長編。
ただし「演義」と題しているものの、印象としては『水滸伝』に近い気がする。前半の主人公格である後の唐の将軍・秦叔宝が放浪を繰り返し、やはり後に唐の重臣となる魏徴、尉遅恭(敬徳)、程咬金(知節)、徐懋功(李勣)、李靖といった人物と出会いを重ねる点あたり。
それから煬帝の後宮にいた女性たちが、意外とあとの方まで登場する。
しかるにこれらの人物は、下巻の1/4あたりで一斉に退場してしまうのだ!年表によると、隋朝による中国統一(589)から玄宗の死(762)まではおよそ170年。当然、何代にもわたる世代交代が不可避である。下巻の後半では、秦叔宝の孫という兄弟がところどころに顔を出し、上・中巻との連続性をなんとか維持しようとしているが、いかにも無理がある感が否めない。
文句の言いついでに、この時代の宿の名前に「飯店」はないでしょ?あれは"HOTEL"の音写だよ。また朝鮮半島の王朝は、高句麗だろうが新羅だろうが全部「高麗」としている点も、抵抗がある。
史実を知ろうと思ったら、『隋の煬帝(ようだい) (中公文庫)』、『則天武后―女性と権力 (中公新書 (99))』、『楊貴妃―大唐帝国の栄華と暗転 (中公新書)』、『安禄山―皇帝の座をうかがった男 (中公文庫)』などを、独立に読むべきであろう。
おっと、たまたまみごとに中公文庫、中公新書ばっかり。私は中央公論新社の回し者か?