🍉しいたげられたしいたけ

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読書日記をしばらくサボってしまった

この間、全く本を読んでいなかったわけではない。仏教関係書が中心で、あと再読が多かった。宗教と言うと今日び引く人も多そうだが、私の場合、実践はゼロ。もっぱら紙の上の知識を求めるのが目的である。
中でもめぼしいところはと言えば、
坂本幸男、岩本裕(訳注)『法華経』(岩波文庫)上:asin:4003330412、中:asin:4003330420、下:asin:4003330439
を2度、通読したことくらいか。
6月に悪性の夏風邪でダウンしていたときに手に取ったのだが、意外なくらいすらすらと読めてしまった。これは訳者の方々の力量によるところが大きいと思う。
しかしこの「すらすら読める」というのが落とし穴で、通読してさて何が書いてあったかと思い出そうとすると、思い出せない。比喩が多い。「法華七喩」という言葉があるくらいだから。「授記」と言って「誰それは未来に仏になる」という予言が多い。それから法華経自体の中に、法華経を読み、記憶し、他人に勧めるべきだという記述が多い。しかしこれらはいわば末節の部分で、では本質は何だったかと問われると、答えられない。
そこでもう一度読み返すことにした。
読み返しながら、法華経の内容は、要約しようと思ったらかなりコンパクトに要約できてしまうんじゃないかと思った。誰しも考えることは同じと見えて、あとで法華経の要約をいくつも見つけた。『法華経』下巻の解説「四、法華経大意」(p430〜476)であるとか、菅野博史『法華経入門 (岩波新書)』「第二章 『法華経』の構想の基盤と全体の構成」(p17〜80)であるとか、渡辺照宏『お経の話 (岩波新書)』「9 法華経」(p182〜193)であるとか。
ここでは要約の要約として、渡辺照宏『日本の仏教 (岩波新書)』から、「III さまざまな流れ 法華信仰」の一部を引用しておこう。ただし渡辺師は法華経および日蓮宗に対する批判的なスタンスを明確にしている人だという点については、注意が必要だが。

 この経の要旨を述べると、ある日シャーキャムニが三昧(瞑想)に入ると、不思議な現象が現れた。弟子たちが驚いてその理由をたずねる。そこで仏陀が答えていうには、従来自分が説いてきた小乗の説は実はかりの教えで、本当の教えは、これから述べる大乗である。「シャーキャムニが人間として生まれ、ガヤーの近くの道場で悟りを開いて仏陀になった」と人々は信じているが、実は仏陀は限りない昔からの仏陀なのである。不生不滅である。ただ衆生をはげますために、入滅の事実を示すだけである。
<中略>
 『法華経』の要旨はこの一点に尽きる。あとはいろいろの角度から、久遠実成〔くおんじつじょう〕なる仏陀の徳の賛美、弟子たちが将来仏陀になるという預言、塔を立て仏像を作ることの功徳、この経典を受持・書写・読誦・解説・修行することの功徳などを述べている。

(p178〜179)
本当は引用した前後の部分での法華経批判が実に辛辣で、法華経信仰の立場に身を置かぬ者としては言っちゃうと痛快なほどなのだが。
しかしだからと言って法華経は読む価値がないかというと決してそんなことはなく、法華経を通読したことによって、これまで目を通してきた仏教解説書のうち、「そうか、あの部分はこのことを言っていたのか!」と、言わんとすることがよりよくわかるようになった箇所が何箇所も現れた。
けだし古典を読むご利益とはそういうことなのだろう。

法華経〈上〉 (岩波文庫)

法華経〈上〉 (岩波文庫)

法華経〈中〉 (岩波文庫)

法華経〈中〉 (岩波文庫)

法華経〈下〉 (岩波文庫 青 304-3)

法華経〈下〉 (岩波文庫 青 304-3)