しいたげられたしいたけ

空気を読まない。他人に空気を読むことを要求しない

マイ書評を書くのをながらくサボってしまった

「余剰次元」と逆二乗則の破れ―我々の世界は本当に三次元か? (ブルーバックス)

「余剰次元」と逆二乗則の破れ―我々の世界は本当に三次元か? (ブルーバックス)

本はぼつぼつ読んでいる。一冊、読破したら、簡単でもいいから何か書いておくべきだとは思う。そういうことを面倒くさく感じるのも老化現象のひとつだと、自分を戒めねばならぬ。
と言いつつ、いずれも実は読んでから間がある本ばかりなのだが…
村山斉『宇宙は本当にひとつなのか―最新宇宙論入門 (ブルーバックス)』、今日の朝日朝刊読書欄に載った講談社の広告によると10万部突破とのことで、同じ著者の前作『宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)』ともども、この手の本がベストセラーになることは、理系のはしくれのはしくれとして、実に喜ばしく感じる。
しかし、同じテーマを扱った一般向け書としては、私個人としては村田次郎『「余剰次元」と逆二乗則の破れ―我々の世界は本当に三次元か? (ブルーバックス)』のほうが、圧倒的にわかりやすかった。
なんでかというと、理由の一つは、村山本は「数式を使わない」という、私に言わせれば古臭いルールをかたくなに守っているのに対し、村田本は高校数学・高校物理レベルの数式ならどんどん載せていることだと思う。
大統一理論に立ちふさがる「重力が他の力に比べて圧倒的に弱いのはなぜか?」という壁を乗り越えるカギは、力の伝わり方の幾何学的形状と密接なつながりがある。式を出してもらったほうがわかりやすいのだ。またそのことによって、他に「強い力」のこれもまた奇妙な特徴についても、素人ながらイメージがつかみやすくなる。村田本P135以下の説明によると、「強い力」は距離0.1fm*1以下では重力や電磁力と同じ逆二乗則に従うが、それを超えるとなぜか、なんと「定数」(!)になってしまうのだそうだ。それで「強い力」で結びついたクォーク同士を遠距離まで引き離そうとすると、無限に大きな力が必要になるという。現実にはその注入されたエネルギーを使って真空中からクォーク対が作り出され、二つの中間子になってしまうのだそうだ。だからクォークは単体で観測されたことなないんだそうだ。へぇ。
もう一つ私が村山本より村田本のほうがわかりやすいと感じた理由は、村山本は暗黒物質&暗黒エネルギーとか、ニュートリノとか、宇宙論に関する話題を幅広く扱っているのに対し、村田本は「余剰次元」つまり見えない宇宙の存在の、実験的証拠を探し出そうとする試みという、かなりピンポイントに絞り込んだテーマを扱っていることだと思う。村山本に対する不満として、ある一つの話題が打ち切られたとき、この話題があとで再度論じられて解決がつくのか、それとも謎のままなのかが、わかりにくいということがある。
いや、繰り返すが、村山本が広く読まれるのは嬉しいことだと思う。でも村田本も、もっと売れてほしい。だから微力だけどブログに書いて応援します。書影もつけました。

*1:フェムトメートル、1のマイナス15乗m