しいたげられたしいたけ

ヤジが嫌なら国会のヤジをやめろ!

伊坂幸太郎を二冊

面白い面白いという評判は聞いていたが、なかなか手に取る機会がなかった。未チェックの作家、多いな。

グラスホッパー (角川文庫)

グラスホッパー (角川文庫)

まず手に取ったのが『グラスホッパー (角川文庫)』。深い意味はなく、近所のブックオフに美品があったというだけの理由である。
すげ!(゚Д゚;
殺し屋がいっぱい出てくる物語なんだけど、この「ぞわっ!」と来る恐怖感は、他に似た人をすぐには思いつかない。
ただし文庫カバー裏表紙の「分類不能」という紹介文はウソで、ハードボイルドの定石をきちんと踏まえて書かれていると思う。
個人的には「蝉」と呼ばれる殺し屋が特に好きだな。天才的な運動神経を持つナイフ使い。容貌を想像するとしたらイチローかな、と最初思ったが、後に考えを変えて全盛時の朝青龍にした。素人目にも対戦相手の相撲取りより動作が半呼吸速い。おそらく朝青龍本人の目には、相手の動きが止まって見えていただろう。
似た人を思い出せないと書いたが、ウルフガイ平井和正をちょっと思い出した。異様なほど読みやすい文体とストーリーテリングの技術。いや平井和正伊坂幸太郎は異質か。平井ワールドには「挫折した学生運動ルサンチマン」というバックグラウンドが漂っていることは、他人の解説を読まなくてもすぐに気付いた。未来とか進歩とかいうものに対する深い絶望感。そのせいか後日、新興宗教にヘンなハマりかたをしたりして見るも無残に壊れてしまった。いやコワれているというのなら、マンガ家のいしいひさいちとか、コワれている人はいくらでもいるのだが、いしいひさいちとかのコワれ方はまだ見て楽しんでいられる。平井和正の壊れ方はシャレにならなかった。ええい、話がずれた!
伊坂幸太郎は、やはり時代が違うのだろう、絶望とか裏切られるとかに値する期待を、世間や人生に対して最初から抱いていないような虚無さを感じる。
重力ピエロ (新潮文庫)

重力ピエロ (新潮文庫)

もう一冊、読んでみた。『重力ピエロ (新潮文庫)』。
うーん、この人は文学が好きな人なんだろうな、と思った。『グラスホッパー』には『罪と罰』がしばしば出てくるが、『重力ピエロ』では芥川龍之介とか井伏鱒二とかが、折々に巧みに引用される。分厚い文学のバックグラウンドがあるからこそ、これほど読みやすい文章が書けるのだろう。
今回は、やはりSFの人で山田正紀を思い出した。小説を後ろから書いているんじゃないかと思うくらい、風呂敷を広げるだけ広げて、ラストまでにみごとに畳んでみせる力量。
しかし私はわがままなわがままな読者なのだ。この著者はきっと両書以上のものすごい傑作を書いているはずだぞ!もっと何冊か読んでみよう。