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「NHKスペシャル」取材班『アフリカ―資本主義最後のフロンティア』(新潮新書)

アフリカ―資本主義最後のフロンティア (新潮新書)

アフリカ―資本主義最後のフロンティア (新潮新書)

白戸圭一『日本人のためのアフリカ入門 (ちくま新書)』が良かったので、amazonで類書を探して読んでみた。
「良かった」つか「アフリカが成長しつつある」という情報を、別の情報源からも確認したくなったのだ。結論を先に言うと、アフリカのテイクオフは、どうやら間違いないらしい。
白戸本にもたびたび言及する予定なので、『アフリカ―資本主義最後のフロンティア (新潮新書)』はNHK本と略記する。「まえがき」に続いてアフリカの地図が載っていて、「本書で取り上げる各国」としてケニア・ウガンダ・ルワンダ・エチオピア・タンザニア・ボツワナ・ジンバブエ・南アフリカという国名が並ぶ。アフリカ東部から南部の国々だ。
白戸本で経済成長著しい国々として名前が挙げられていたのは、赤道ギニア・アンゴラ・スーダン・チャド・ナイジェリア・ガボン・ガーナといった主にアフリカ西部の国々で、みごとに重なっていない。
NHK本のキーワードを三題噺のようにまとめると「資源」「中国」「携帯電話」である。前二者はよそでもしばしば見かけるから意外性は少ないが、アフリカ各地で「携帯電話」の爆発的な普及が始まっており、それがアフリカ社会の経済成長の牽引力となっているというのは、少なからず驚いた。
本書第一章は「携帯電話を駆使するマサイ族」という章タイトルで、遊牧をなりわいとするため固定電話網の普及は進んでいなかったが、もともと家族の絆が強く(p21)、世界でも有数のおしゃべり好き(p23〜24)と言われるアフリカ人には、携帯電話はうってつけのツールだったというのだ。ちょっと考えれば、マサイ族だって日本人だって、ケータイの原理や技術を100%理解したうえで使いこなしているわけではないという点では、何の違いもないことに気づく。
で、アフリカ各国にケータイの中継基地を作りまくっているのが、中国からやってきた技術者なのだそうだ。中国人がアフリカ大陸に大量に進出していることは白戸本にも書いてあった。アフリカ大陸に永住または長期滞在している日本人は2009年10月1日現在7888人、一方中国人は推定80万人だそうだ(白戸本p148)。いったいどんな人たちがアフリカに来ているのだろうと疑問に思ったのだが、NHK本によると「中国がアフリカで設立した企業は中国政府が公認しているだけでも1600社を超えている」(p93)とのことで、おそらく国策によって派遣されている人が多いのだろう。そりゃ80万人もいれば、いろんな人がいるだろうけど。
NHK本には「9億人のマーケットと豊かな天然資源」を狙ってのこと(p93〜94)としか書いてないが、いろいろと想像をたくましくしてみる。中国政府は、欧米や日本など先進国を徹底的に研究していると言われる。日本が長期不況に苦しめられている原因の一つは円高で、古い話だが一夜にして円の極端な高騰を招いた1985年の「プラザ合意」などを思い出すと、為替レートがいかに恣意的なものであるかがわかる。中国政府は、人民元の割安なレートを、何としても守りたいのだろう。しかし通貨は高すぎても安すぎても悪影響がある。自国通貨が割安であれば、輸入には不利である。アフリカから直接資源を調達するルートを確保しようと試みるのは、その弱点を補うためであろうか。
またレアメタルを巡って中国と日本の間に摩擦があったのは記憶に新しいが、そのレアメタル大国である中国がなぜアフリカ?という疑問は、アメリカの石油戦略を模倣しようとしているのではないかと想像すると、つじつまがあいそうだ。アメリカは世界有数の産油国だが、資源の保護のため自国の産油量は伝統的に抑え気味にし、海外での石油の生産と流通を自国のコントロール下に置くことによって莫大な利益を得てきた。中国はレアメタルでそれをやろうとしているのではないか?
中国の試みが成功するか失敗するかは、わからない。しかし中国はとにもかくにも試みている。
日本は何かやっているのか?何もしなくていいのか?(-_-;
いちお書いておくと、白戸本によると、日本は1991年から2000年まで10年連続で世界一のODA供与国であり、アフリカ各国に対しても1995年には13億ドル超のODAを供与していたとのこと(p135)。これは誇っていいことだと思う。しかしアフリカ経済を着火させるには至らなかった。ところで2007年にアフリカに流れ込んだ直接投資の総額は約407億ドル(p145)とのことで、直接比較は無理があるにしろケタが違う。
白戸本には書いてないけど、想像するにODAは、平等に、均質にをモットーに各国に配分されたことだろう。いっぽう直接投資のほうは、ミもフタもなく産油国を狙って行われた。これが結局、誰もが火がつくまいと思ったアフリカの経済成長に点火した。
現実ってヤツは…(-_-;
急速な経済成長は、一方でさまざまな歪みを生む。NHK本第四章では、世界有数の金埋蔵量を誇るタンザニアでゴールドラッシュが始まったが、優良金鉱は海外資本の大手企業に採掘権を独占され、昔から手作業で金の採掘を行ってきた地元の中小業者は、わずかな補償金と引き換えに立ち退きを迫られているという現実が描かれている。
たまたま1/20(金)のNHK総合TV「金とく」という番組を観た。木曽ヒノキの産地である「不入山」というところでは、江戸時代にヒノキの伐採権が尾張徳川家によって独占されることになり、以前からヒノキを伐っていた地元民は「盗人」として死罪など厳罰に処せられたという。
あたりまえのことだが、はじめから先進国だった国はないし、はじめから民主国家だった国もないのだ。
つか経済成長って何だろう?経済成長するためには、つまるところどうすればいいんだろう?
豊かさって何だろう?豊かになるためには、つまるところどうすればいいんだろう?
考えれば考えるほど、わからなくなってくる。というより最初から何も知らなかったんじゃないかと思えてくる。しかし日本人はいま(日本人だけじゃないけど)、もう一度それを考えることを迫られてるんじゃないかな?
日本人のためのアフリカ入門 (ちくま新書)

日本人のためのアフリカ入門 (ちくま新書)