しいたげられたしいたけ

空気を読まない。他人に空気を読むことを要求しない。

越谷オサム『陽だまりの彼女』(新潮文庫)

陽だまりの彼女 (新潮文庫)

陽だまりの彼女 (新潮文庫)

すみません。例によって「売れてる本」経由です。
陽(ひ)だまりの彼女 [著]越谷オサム - 佐々木敦(批評家) - 売れてる本 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
いかん、泣いた。泣いたどころじゃない、号泣。号泣どころじゃない、嗚咽。
トラウマに触れたのだ。持病の季節性鬱で、精神状態が不安定ってこともあったかもしれないが。どんなトラウマかというと、実は上の方の検索窓に「トラウマ」と入れると、その一端がエントリーとして出てくるのだが、ネタバレしてしまうので、未読の方にはお勧めしない。私はこのヒロインに愛される資格はないのだな。
それにしても、本書で交わされる主人公とヒロインの会話の、なんと自然なことか。今日びの若いカップル、後半からは若い夫婦の会話として、現実にあっても全然おかしくないように思った。
ただ現実と違うような気がするのは、彼らの会話には、必ずお互いに対する「感謝」とか、あるいは「尊敬」とか、それからお互いにとってお互いが「必要」であることとか、ぶっちゃけ「愛している」こととか、そういったことがどこかでちゃんと言葉として語られることである。
「バカ夫婦」(p138)を自称したりもするが、読者として彼らにとても好感が持てる秘密は、このあたりにあるのかも知れない。
これは現実のほうが真似すべきことだよね。大きなお世話だけど。
読み進むにつれて、このまま何事も起こりませんように、この二人が、このまま普通のおじさんとおばさんになりますように、このまま普通のおじいさんとおばあさんになってしまいますように、と祈るような気持ちになった。
残念ながら、もしそうなったら「フィクション」というものが成立しないということは、百も承知なのである…
作中にしばしば登場するビーチ・ボーイズ『素敵じゃないか』貼っちゃえ。