しいたげられたしいたけ

空気を読まない。他人に空気を読むことを要求しない

朝日新聞特別報道部『プロメテウスの罠: 明かされなかった福島原発事故の真実』(学研パブリッシング)

プロメテウスの罠―明かされなかった福島原発事故の真実

プロメテウスの罠―明かされなかった福島原発事故の真実

これも読んだのは少し前だけど、前回のエントリーに関連して、何か書いとかなくちゃと思ったので。と言いつつ前回のエントリーをアップしてから1週間以上も経ってしまったが。
前回のエントリーで「ネットの影響力など微々たるもの」「(マス)メディアの影響力こそがゾッとするほど巨大」と書いた。何日か前の「はてなホッテントリ」にネットの影響力を過大視しているとしか思えない記事が上がっていたが、ブクマか何かで突っ込もうと思いつつあっという間に日にちが過ぎてしまい、もう見つからない。
本書は福島第一原発の事故を綿密に取材し、SPEEDI(放射能影響予測システム)はじめ官僚の握る情報がいかに必要な場所に届かないか、現代日本のシステムがいかに情報の血行不良を起こしているかをレポートしているが、例によって思いっきり邪道な読み方をしてやろう。
なんでマスメディアの力が巨大なのか?総理大臣が読むからである。
総理大臣に限らず、国会議員とか、官僚のトップとか、企業経営者とか、世の中の実権を握っている人々が読むからである。

 原子力安全・保安院のERC(=緊急時対応センター:引用者注)がSPEEDIを使って独自に避難区域案をつくろうとしていたことを、当の最高責任者は新聞で知った。
「おれの目の前に保安院のトップがいたんだよ」
 10月31日夕、東京・永田町の議員会館。原発事故当時の首相、菅直人(65)は強調した。菅は毎朝、「プロメテウスの罠」を読んでいる。その日の朝も、いつも通り朝日新聞を開いた。プロメテウスを読み始めた菅は驚愕した。

(本書第二章・p70)
新聞を読んだ菅前総理が、旧知の朝日新聞記者に電話をかけ、プロメテウスの担当記者への取り次ぎを頼むシーンがこれに続く。緊急時のこととはいえ、新聞自身が新聞の力の源泉をネタバレしている例はめずらしいよね?
ブログかtwitterを読んだ総理が、ソースを求めてブログ主やツイート主に連絡を求めるという状況は、いくらネットが普及した今日でもちょっと想像しづらい。いや生活保護不正受給をめぐって、とある保守系の有名国会議員が、2ちゃんねる情報を鵜呑みにして騒いだとか騒がなかったとかいう話を小耳に挟んだような気はするが、詳細は知らないし調べようとも思わない。
本書第三章には、気象庁気象研究所(気象研)が1957年からずっと続けている大気と海洋の環境放射能の観測に関して、事故後の2012年3月31日に本庁(気象庁)から突然予算の打ち切りを告げられたという話が紹介されている。
気象研の観測は、米国の水爆実験をきっかけに始まり、世界で最も長い記録として各国から高く評価されているそうだ。
気象庁の口実は、緊急度の高い土壌・食品・水などの放射能モニタリングなどに予算を回したいというものだったが、記録は一度でも途切れると価値が激減するので、他部署の予算の余りをかき集めて観測を継続すると、「どこの機関から何が提供されたのか」という犯人捜しが始まったという。予算を返納させるために!
これなんか、総理と言わず有力政治家の一喝を期待したい話である。庶民はかくのごとく無力なのだから(-_-;
追記:
その「政治家の一喝」が土建・道路など日本の行政をいかに歪めてきたかを考えると、うわ言にもそんなもんに期待しちゃいけなかったのかも知れない。どうすればいいんだ?