しいたげられたしいたけ

人権を守るには人権を守るしかない。人権以外の何かを守ることにより人権を守ろうとする試みは歴史的に全て失敗した

謎解き日本のヒーロー・中国のヒーロー(中国編その1)

連番でいうと「その8」となります。ただし「その0」から始めるというややこしいことをしているので、通算では第9回目になります。

01876/01877 CXX02375 わっと 中国のヒーローの条件1・本人は何もしない
( 3) 98/04/05 19:01

 「日本のヒーローの条件」はネタ振りとしてはコケたけど(^^;発言#1853
で「中国のヒーロー」もやると書いてしまったので、遅ればせながら約束
を果たすことにします。あんまり期待しないでおつきあい願いますm(_ _)m
>ALL

 予定している面子は以下の通りです。
( 周 )文王      …周王朝の創業者
(春秋)斉の桓公  …春秋五覇の一人
(春秋)晋の文公  …春秋五覇の一人
(春秋)孔子
(戦国)魏の信陵君 …戦国四君の一人
( 秦 )始皇帝
( 漢 )高祖・劉邦
(三国)劉備
( 唐 )三蔵法師玄奘…ただし『西遊記』の登場人物として
( 宋 )宋江    …『水滸伝梁山泊の首領
( 明 )太祖・朱元璋明王朝の創業者
(近代)毛沢東

 例によって実在・フィクションごたまぜになっております。また『史
記』の時代の人が多いとか、王朝創業者が多いとか、バランスのはなはだ
悪いところはご容赦を…
 なんでこんなことを思いついたかというと、宮崎市定水滸伝』中公新
書の中に「主人公の宋江は何もしない。史実に似たタイプを求めると漢の
高祖のように、中国では中身の空虚な人間を高く評価する傾向があるよう
だ」というような意味の一節があり(手元に本がないのでうろおぼえです
が(^^;)、そう言われてみれば三国志劉備も何もしないなぁ、とか、西
遊記の玄奘も守ってもらうばかりの存在だなぁ、とか、同様の例が次々に
浮かんだという次第です。

98/04/05(日) わっと(CXX02375)

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「ネタ振りとしてはコケた」と書いているのは、レスがあまりつかなかったことを言っています。 

日本のヒーローほど馴染みのないであろう面子が並びますので、一人一人に少し詳しめの紹介を付け加えます。

 まずは周王朝の創業者・文王姫昌〔きしょう〕から。元ネタはもちろん『史記』ですが、私は宮城谷昌光『王家の風日』経由で基本知識を入手しました。

王家の風日 (文春文庫)

王家の風日 (文春文庫)

 

 殷王朝の最後の王・紂王〔ちゅうおう〕は暴君として知られます。妲己〔だっき〕という美女を寵愛し政治をないがしろにし、酒池肉林の故事は彼の行為が起源と言われます。また有力諸侯を次々と殺害したとも言われます。九侯という諸侯はその肉を塩辛にされ、鄂侯は干肉にされたと伝えられます。

文王は殷末の有力諸侯の一人で、殷都から見て西方の岐山に割拠したと言われます。太公望こと呂尚〔りょしょう〕は文王の軍師で、呂尚が釣り糸を垂れていたときに文王と出会ったという伝説があるので、日本では「太公望」と言えば釣り人の代名詞となっています。

文王もまた謀反を疑われ紂王によって羑里〔ゆうり〕というところに幽閉されました。長男の伯邑考〔はくゆうこう〕は釜茹での刑により殺され、文王はそのスープを飲まされたという伝説もあります(スープは『王家の風日』によるもので、肉を食べさせられた、あるいは肉まんにした肉を食べさせられたというバリエーションもあるようです。なお宮城谷氏によると伯と考は敬称で邑が名ではないかとのことです)。

脱出した文王は、太公望や次男の武王・姫発とともに殷王朝に反旗を翻しますが、文王の存命中に殷王朝打倒を果たすことは叶いませんでした。紂王を攻める決定的なチャンスを目の前にしながら、太公望に勝算を下問し、太公望が「八割」と答えたところ、「十割でなければ」と兵を返したという伝説もあります。

文王没後、文王の木主(等身大の位牌)を乗せた車を武王と太公望が左右に固める周軍と、紂王の殷軍が牧野というところで決戦し、敗れた紂王は自殺、妲己は殺され、王朝交代が成立したと伝えられます。

しかし武王も、苛酷な戦いの連続のためか早世し、武王の幼い子・成王が、太公望や武王の弟・周公旦らの庇護を得て、周王朝第二代王として即位します。孔子は文王、武王、周公を神聖視し、特に決して成王に取って代わろうとしなかった周公を尊敬したと言われます。「夢に周公を見ず」は、孔子が自らの老いによる衰えを嘆いた言葉として有名です。

ただし王朝最後の王や短命に終わった王朝は必ず悪く書かれるという法則があるので、紂王の伝説がどこまで真実かはわからないことをお断りしておきます。

なおこの時代を扱った長編小説として、明代に成立したと言われる『封神演義』があります。日本語版は安能務訳が全三巻で講談社文庫より出ており、「少年ジャンプ」に連載された藤崎竜のマンガもありますが、私はいずれも未読です。