🍉しいたげられたしいたけ

NO WAR! 戦争反対!Ceasefire Now! 一刻も早い停戦を!

教科書展示会@名古屋市鶴舞中央図書館を見てきたが、中学歴史教科書は学び舎版が圧倒的に優れていると感じた

怪しげな情報が「拡散」ということで私のところにも回ってきた。なんでも名古屋市が来年度から育鵬社版の中学教科書を採択する可能性が高いとか。
真偽不明だが、現名古屋市長がご存知の通りのとんでもねー奴なので、何があっても驚かない。失望はするけど。
こんな togetter も読んだ。
教科書展示会行きましょ。中学公民教科書 #育鵬社 #自由社 #東京書籍 #清水書院 #教科書 - Togetter
たびたび書いているように、私は名古屋市民ではない。だが教科書展示会をやっている名古屋市鶴舞中央図書館は、拙宅から電車で便のよいところにある。いい機会なので、日曜日の午後をこれに費やすことにした。
ここに来るのは初めてではなく何度か来たことがあるはずだけど、久しぶりに来てみると、でかい。

名古屋市の図書館で「中央」とつくのはここだけだから、市のメインの図書館ということだろうか。
角度を変えてもう一枚。

中学の社会科の教科書だけが展示されていたわけじゃない。小学校から高校までの各社の教科書が、会場となった学校の教室より少し大きめくらいの会議室の、壁一面の書架をぎっしり埋めている光景は壮観だった。
閲覧者は、会場に着いた午後一番には5人くらい、だんだん増えて退出する頃には15人くらいだった。
教科書は各社版ごとに2冊ずつあった。幸い育鵬社版の歴史教科書を手に取ることができた。
あと下記サイトによると、現在名古屋市が採択しているのは教育出版版とのこと。プリントアウトが会場に掲示してあった。
http://www.city.nagoya.jp/kurashi/category/11-9-3-2-1-7-0-0-0-0.html
それから書架で一際目を引いたのは学び舎版だった。他社の教科書は横幅A4縦幅B5という変形サイズ、あとでネットで調べたらAB版と言うんだそうだが、この会社に限ってはA4版と背が高い。厚みも他社よりある。この会社の名前は、こんな記事で読んだ記憶が残っていた。
http://www.asahi.com/articles/DA3S11695119.html
この3冊を比較してみることにした。いっぺんに全部は目を通せないから、近現代史、明治維新前後から第二次世界大戦あたりまでを読み比べてみようと思った。
まず目についたのは、学び舎版の世界史の記述の多さだ。例えば明治維新の前史として、欧米の市民革命、産業革命、それから帝国主義と呼ばれる植民地獲得競争の時代がどの社の版にもあるのだが、教育出版版…全274ページ中10ページ、育鵬社版…全290ページ中4ページ、学び舎版…全324ページ中24ページという具合だ。なお全ページというのは、社によって巻末に年表がついていたりすることがあるので、索引の一番最後に表示されている数字を書いている。
なんでこんなに分量が多いかと言うと、とにかく記述がバラエティに富んでいるのだ。例えば「インドの大反乱」(私の世代は「セポイの乱」と教わったが今はそんな呼び方をしないそうだ)でイギリスと戦った小藩国の女王ラクシュミー・バーイーなんて人名が出てくる。恥ずかしながらこの人のことは知らんかった! アメリカに関する部分では、先住民に対する迫害もきっちり記述されている。
育鵬社版への悪口は、基本、他のサイトに任せようと思うが、4ページって、いくらなんでも少なすぎやしないか?
この部分からではないが、他の箇所、例えば第二次世界大戦直前あたりだと、世界恐慌はどの社の版も外さないが、その直前に繁栄の時代もあったのだ。学び舎版は、ミッキーマウスやチャップリンを登場させてその期間を描く。また、アンネ・フランクの名前もまたどの社の版にも登場するが、学び舎版は、オードリー・ヘップバーンがアンネ・フランクと同年生まれであること、オードリーの兄二人が強制収容所に入れられ叔父が目の前で射殺されたことまで書いてあった。これも知らんかった!
いろいろメモってきたけど全部上げるには1回のエントリーではとても足りないから、私なりの結論を急ぐ。
上記朝日新聞デジタルの記事にある通り、確かに読んで面白い教科書になっていると思う。その面白さと言うのは、歴史に対する多角的な視点と、歴史を貫く大きなストーリーを描こうという試みにあると思う。私見なので間違っているかも知れない。
歴史を貫く大きなストーリーというのは、こうである。人類の社会は、特に近代に至って、爆発的な発展を遂げている。そしてそれは、常に光と影を伴っている。例えば市民革命は人類社会に民主主義や人権をもたらしたが、その初期段階においては第三世界への適用はガン無視された。しかし第三世界はずっと黙ってたわけじゃなく、自発的な抵抗と自己改革の努力をずっと続けてきたのだ。もちろんそれは多くの誤りを伴ったもので、とても一本道のようなものではなかったのだが。
日本の近現代史は、後者の一バリエーションと見るのが適当だと思うし、第二次大戦後、特に近年に至って、ものすごい数の国々が次々とテイクオフを遂げつつある。歴史とは「善玉の日本」と「悪玉の外国」の二項対立などという単純な構図で理解できるような代物じゃないのだ。
うーん、こんなエントリーじゃ、学び舎版を読んで感じた面白さを他人に伝えることはできないな。実物を読むのが一番だろうし、可能ならば他社版と読み比べられたらもっといい。でも教科書って、教科書取扱書店経由じゃないと入手できないんだよね。Amazonで注文とかはできないのだ。
スポンサーリンク