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しいたげられたしいたけ

空気を読まない、他人に空気を読むことを要求しない

意外と楽しい「平均」の世界(その3)二乗平均平方根≧相加平均を証明しようと両辺の二乗の差をとったら分散の公式と同じだった

タイトル出落ちです。“意外と楽しい「平均」の世界” 第1回はこちら。

watto.hatenablog.com

第2回はこちら。

watto.hatenablog.com

第2回で「二乗平均平方根 ≧ 相加平均」の、2項の場合の証明を示した。易しい証明だったと思う。さして変わらぬ手間で、一般の場合すなわちn項の場合も証明できそうだと思った。少なくとも第1回でリンクを貼った内田先生による「相加・相乗平均不等式の一般証明」(PDF) に比べたら、格段に易しくなるはずだ。

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n 個の変数 xi (i =1…n)の相加平均と二乗平均平方根を、次のように表記する。例によってWordで作った画像を貼りつけています。

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そして、二乗平均平方根≧相加平均を証明するために、両者の二乗の差を取ったら、 xi の分散を求める公式と、どんぴしゃ同じであることに気づいた! 確率統計論の基礎の基礎である。ちなみに分散の正の平方根が、標準偏差だ。

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念のために証明を最後まで示す。上式の前半すなわち x の二乗平均を、Σを用いて表記すると次の通りである。

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x の二乗平均から x の算術平均の二乗を引いた式を書き直すと、これ。

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少しトリッキーな気もするが、こう変形する(私がしばらく数学から離れていたからそう感じるだけで、数学の証明では、このくらいトリッキーでもなんでもないはず)。

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さらに二番目の項を、半分だけΣを使った表記に置き換える。

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これを整理して…

f:id:watto:20160528200859p:plain

証明終わり。等号が成立するのは、すべての xi が xi の相加平均に等しいとき、すなわちすべての xi が相等しいときである。

ちなみに最後の式の前半が、分散の定義式である。普通は、この定義式から出発して「分散 = 二乗平均 - 相加平均の二乗」の公式を導く。

念のため再掲すると、こんな感じ。

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ほぼ同じ手順による導出と数値例を挙げた詳しい解説が、「高校数学の美しい物語」さんに上がっていたのでリンク貼らせてもらいます。

mathtrain.jp

で、すげー不思議なのは、相加平均≧相乗平均はあんなに有名なのに、二乗平均≧相加平均の二乗または二乗平均平方根≧相加平均が、あまり取り上げられないことだ。私が知らないだけ?

それより、確率統計論と、各種平均の大小関係みたいな、まったく別々のテーマが結びつくというのは、数学者が大好きな話題のはずじゃなかったの?

Google で検索語を変えてそれぞれ1ページ目だけじゃなく何ページ目かまで目を通したが、「二乗平均平方根≧相加平均の証明」と「分散の公式」を合わせて論じたサイトは見つからなかった。誰も気づいてないはずはないのだが。おかげで「a ≧ b」を証明するのに「aの二乗 ≧ bの二乗」を使うことは間違いじゃないよね、ってことまで自信なくなってしまった(ただし a ≧ 0)。

以下、例によって、私自身がいっこも理解していないヨタを飛ばす。

別々に発展進化した理論が思わぬ結びつきを見せて問題解決につながった実例として、「フェルマーの大定理」の証明に決定的な役割を果たした「谷山=志村=ヴェイユ予想」というのが、確かそんなじゃなかったかとうろ覚えの記憶があった。

 足立恒雄『フェルマーの大定理が解けた!』というブルーバックスを蔵書していたので、引っぱり出したら、該当部が見つかった。

フェルマーの大定理が解けた!―オイラーからワイルズの証明まで (ブルーバックス)

フェルマーの大定理が解けた!―オイラーからワイルズの証明まで (ブルーバックス)

 

 谷山=志村=ヴェイユ予想の不思議さはこのように元来全く関係のない楕円曲線から作られた関数とヘッケなどによって研究されてきた保型形式とが一致してしまうというところにある。

≪中略≫

 このように,表面上関係のなさそうに見える主題が実は同じものを別の面から見ただけなのだというテーマは数学の重要な局面でしばしば登場するので,数学者は「数学的実在が厳然と存在する」とか,「数学の真理が宇宙の真理と深いところで通じている」と信じるのである。

 (上掲書P181~2)

ただし引用部分のすぐ後の箇所で、著者自身はそのような「信仰」に与しない旨が語られていた。