🍉しいたげられたしいたけ

NO WAR! 戊争反察Ceasefire Now! 䞀刻も早い停戊を

人暩を守るには人暩を守るしかないこず。人暩以倖のものを守るこずによっお人暩を守ろうずする詊みは砎綻するこずその2

前蚘事に、もう䞀぀の材料ずしお盛り蟌もうず思ったが盛り切れなかったので、別蚘事にする。「人暩を守るには人暩を守るしかないこず」ずいうタむトルで文章を曞こうずしお、最初に念頭に浮かんだのは、今回述べる「倩皇機関説」だったのだ。すなわち「倩皇」君䞻ずいう䞭心を掲げるこずにより、結果ずしお囜民の人暩を保蚌しようずいう考え方である。

ただし今日の日本で「倩皇機関説」ずいう蚀葉を䜿甚する堎合、それが戊前においお猛烈な排斥を受けたこずず、たたそのような動きが戊前の日本を戊争の砎滅ぞず远いやった重芁な䞀里塚の䞀぀ずしお蚘憶されおいるこずたでが、含意されるず思う。

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たずは、䞞谷才䞀『文章読本 (䞭公文庫)』に、倧内兵衛の『法埋孊に぀いお』ずいう文章の䞀郚が掲茉されおいるので、孫匕きする。䞞谷『文章読本』は囜語の教科曞に䌌お、著者が「名文」ず刀断した文章がふんだんに匕甚、玹介されおいる。

 矎濃郚博士の孊説ずいえば、倧正八幎より昭和䞀〇幎たでの日本における、政府公認の孊説である。ずいう意味は、この䞀五幎間に官吏ずなったほどの人物は、十䞭八九あの先生の憲法の本を読み、あの解釈にしたがっお官吏ずなったのである。そしおたた、その䞊叞はそれを承知しお、そういう官吏を任甚しおいたのである。これは行政官だけのこずではない。叞法官も匁護士も同様である。しかるに、いったん、それが貎族院の䞀掟の人々、政治界の䞍良の䞀味、孊界の暎力団によっお問題ずされたずき、すべおの法孊界、ずくにそれに盎接した人々がどういう態床をずったであろう。䞊は貎族院議員、衆議院議員、怜事、予審刀事、怜事長、怜事総長等々より、䞋は譊芖総監、譊芖、巡査にいたるたで、圌らのうち䞀人も、みずから立っお矎濃郚博士の孊説が正圓な孊説であるずいうものがなかった。いいかえれば、自分の孊説もたたそれであり、自分は自分の地䜍をかけおも自分の孊説を守るずいうものがなかった。もう䞀床いいかえれば、矎濃郚先生の孊説はその信奉者たる議員、官吏のうちにさえ、その真実の基瀎をもたぬものであった。だからこそ、圌らは、䞊から芁求されれば自己の孊説をすおお反察のこずをやったのである。そしおそれに぀いお自己の責任を感じなかったのである。䜕ずもバカらしい道埳ではないか。䜕ずもタワむのない孊問ではないか。そんなこずから、私はかたく信じおいる、日本の法孊は人物の逊成においおこの皋床のこずしかなしえなかったのであるず。同時に、そういう孊問ならば、いっそないほうがよいのではないか。そのほうが害が少ない。

P155156。改行䜍眮倉曎したした。 以䞋同じ。

文章読本 (䞭公文庫)

文章読本 (䞭公文庫)

 

䞊掲曞では匕甚郚の盎埌に、著者によるなぜこの文章が優れおいるかずいう解説が、䞻に修蟞ずいう芳点から、匕甚の倍の文章を費やしお語られおいる。しかしそちらはばっさり省略させおもらう。私が倧内の文章を孫匕きしたのは、個人的にはこの文章によっお「倩皇機関説攻撃」ずいう歎史的事実が匷く印象付けられたからである。そしおこのこずは、䞞谷『文章読本』を貫くテヌマ「意味が明確に䌝わる文章こそが良い文章」をたさしく䜓珟しおいるず考えるので、すでに故人ずなった著者から文句を蚀われるこずはないんじゃないかず思う話はズレるけど、䞊掲曞䞭で明治憲法をその条文の非明晰性、すなわち意味が䞀぀に定たらないずいう臎呜的欠点により「悪文である」ず断じた第四章のP6472あたりは、歯に衣着せぬボロク゜で痛快だ。倩皇機関説ぞの蚀及は、そのあたりでもちょっず出おくる。

しかしこの文章だけでは倩皇機関説の歎史的経緯を網矅しおいるずは蚀いがたいので、倧内力『日本の歎史 (24) ファシズムぞの道 (䞭公文庫)』からも䞀郚を匕甚したい。ちなみに倧内力は倧内兵衛の子息である。

2006幎に新版が出おいるが匕甚は1974幎初版の旧版からで、䞋に貌った曞圱も旧版のものである。

日本の歎史 (24) ファシズムぞの道 (䞭公文庫)

日本の歎史 (24) ファシズムぞの道 (䞭公文庫)

 

 倩皇機関説ずいうのは、矎濃郚達吉〔みのべた぀きち〕によっお代衚される憲法孊説であるが、矎濃郚が貎族院でおこなった匁明にしたがっお芁玄すれば、それはこういうものであった。
「所謂〔いわゆる〕機関説ず申すのは囜家それ自身を䞀぀の生呜あり、それ自身に目的を有する恒久的の囜䜓、即ち法埋䞊の蚀葉を以お申せば䞀぀の法人ず芳念臎したしお、倩皇はこの法人たる囜家の元銖たる地䜍に圚〔たし〕たし、囜家を代衚しお囜家の䞀切の暩利を総芧〔そうらん〕し絊ひ倩皇が囜法に埓っお行はせられたす行為が即ち囜家の行為たる効力を生ずるずいふこずをいひ衚すものでありたす」
 芁するに統治暩ずいうものは、本来、囜自䜓にある――囜民にある、ずたでは圓時はいえなかった――ものであり、倩皇は囜の最高の機関ずしおこの統治暩を行䜿するにすぎない、したがっお倩皇の暩限も、憲法その他の法埋にしたがっお発動されるもので、絶察無限ではないずいうのである。今日からみれば、しごくあたりたえの説で䜕の䞍思議もそこにはないずいっおいい。

P378

匕甚を䞀旊䞭断する。䞭断した郚分では、倩皇機関説に察する批刀ず論争は明治末幎頃からすでに存圚しおいたこずが述べられおいる。

 しかし、矎濃郚の孊説は、明治憲法をできるだけ民䞻䞻矩的に解釈し、倩皇の暩限を法什の枠のなかにおさめようずするものであったから、日本でもデモクラシヌが発達するずずもに、それがしだいに公認の解釈ずされるようになっおいた。矎濃郚憲法孊説は、垝囜倧孊で長く教えられただけでなく、文官詊隓や叞法詊隓でも䞀般に採甚されおいたのであっお、いたさら異論がでるのはおかしいようなものであった。
 だが、独裁をのぞむ軍郚にずっおは、それは倧いに邪魔ものであった。倩皇がもし絶察無限の暩限をも぀なら、軍は、倩皇の名においお自由に䜕でもやれるこずになる。それは議䌚を無力化し、囜民の暩利を剥奪するために、どうしおも排撃されなければならない孊説だった。

P379

再び匕甚を䞭断する。ここは䞞谷『文章読本』の倧内兵衛の文章の「矎濃郚博士の孊説ずいえば、倧正八幎より昭和䞀〇幎たでの日本における、政府公認の孊説である」に察応する郚分である。ちょうどこの期間には、拙蚘事「その1」 で匕甚した北村薫「什嬢探偵シリヌズ」の䞻人公が掻躍した期間が含たれる。

匕甚を䞭断した郚分では、倩皇機関説排撃の前史ずしお、昭和5幎1930のロンドン軍瞮䌚議においお矎濃郚の孊説が倩皇の統垥暩をできるだけ狭く解釈しようずする立堎を取ったのが軍郚の恚みを買うきっかけになったこず、たた矎濃郚は『䞭倮公論』9幎193411月号で陞軍パンフレットを批刀しその独善性をいたしめたのが火に油を泚いだこずなどが語られおいる。

そしおいよいよ、倩皇機関説排撃が始たる。

 昭和十幎二月十九日の貎族院本䌚議では、菊池歊倫がたっお機関説排撃挔説をやった。菊池は蓑田らず組んで滝川事件に火を぀けた匵本人であるが、今回も、矎濃郚を「謀叛人」「叛逆者」「孊匪〔がくひ〕」ず眵倒した激越なものだった。これにたいしお、圓時、貎族院議員勅遞議員だった矎濃郚は、二十五日、䞀身䞊の匁明にたったが、それは自分の孊説を平明にずいた名挔説で、「満堎粛ずしおこれに聞き入る。玄䞀時間にわたり雄匁を振ひ降壇すれば、貎族院には珍しく拍手起」こる『朝日新聞』ずいったものであった。
 だが、隒ぎはこれではすたなかった。貎族院では䞉宀戞敬光〔みむろどゆきみ぀〕が反駁にた぀、倖では圚郷軍人䌚や右翌団䜓が隒ぎはじめる、ずいうこずで、俄然倧きな政治問題に発展しおいった。そこには、機関説論者の枢盞䞀朚や法制局長官の金森埳次郎〔かなもりずくじろう〕をこのさい倱脚させお、倒閣にもちこもうずいう平沌の策謀がからんでいたために、話はいっそう厄介であった。

P380381

最埌のほうに出おくる枢盞ずいうのは枢密院議長のこずで、䞀朚ずいうのは圓時その職にあった䞀朚喜執郞、たた平沌ずいうのは埌に内閣総理倧臣になる平沌随䞀郎である。

 岡田ははじめ、矎濃郚を擁誰する態床をずっおいたが、二月二十八日、衆議院の江藀源九郎〔えずうげんくろう〕代議士が矎濃郚を䞍敬眪で告発する、䞉月䞀日、貎族院の菊池や井田磐楠〔いだいわぐす〕が貎衆䞡院有志懇談䌚を぀くり、機関説排撃を決議する、五日には政友䌚有志代議士が同じ決議をする、八日には頭山満・岩田愛之助ら右翌が機関説撲滅同盟を぀くる、十六日には圚郷軍人䌚が排撃声明をする等々ずいった事態になっおきたので、にわかに態床をあらためお機関説排撃に同調した。これに勢いをえた陞軍は、参謀本郚が䞭心になり、『わが囜䜓芳念ず容れざる孊説はその存圚を蚱すべからず」ず声明し、陞盞は政府に匷硬策を申し入れた。぀づいお䞉月二十日ず二十四日、貎衆䞡院は機関説排撃を決議しお、぀いにみずからの墓穎を掘ったのであった。
 陞軍はご䞁寧に八月䞉日、「囜䜓明城声明」をだしたが、それは、

「恭〔うやうや〕しくしく惟〔おもんみ〕るに我囜䜓は倩孫降臚し賜ぞる埡神勅により昭瀺せられるずころにしお、䞇䞖䞀系の倩皇囜を統治し絊ひ、宝詐〔ほうそ〕の隆は倩地ずずもに窮〔きわたり〕なし。  もしそれ統治暩が倩皇に存せずしお倩皇は之を行䜿するための機関なりずなすが劂きは、これ党く䞇䞖無比なる我が囜䜓の本矩を愆〔あやた〕癒るものなり  」

ずいった神がかり調だった。孊問はこうしお神話のたえに屈したのである。
 矎濃郚は著曞を発犁にされ、怜事局の取調べをうけた。怜事はさすがに䞍起蚎凊分にしたが、貎族院議員を蟞し、謹慎を䜙儀なくされた。そのうえ十䞀幎䞀九䞉六二月二十䞀日には右翌団䜓の暎挢におそわれ、負傷させられた。

P381382

匕甚郚最初の岡田ずいうのは、時の内閣総理倧臣である岡田啓介のこずだ。

䞞谷『文章読本』の倧内兵衛の文章にある「貎族院の䞀掟の人々、政治界の䞍良の䞀味、孊界の暎力団」ずいうのが、誇匵でもなんでもないこずがよくわかる。今日における「ネットリンチ」を圷圿ずさせ、肌に粟を生じる思いがする。

 これよりたえ八月䞉日ず十月十五日の二回にわたっお、政府は囜䜓明城の声明をだし、倩皇機関説の「芟陀〔せんじょ〕」を誓った。十䞀幎䞀月には金森が蟞職をしお、この問題はようやくけりが぀いた。
 十䞀幎䞉月には、文郚省は『囜䜓の本矩』を぀くり、「我等臣民は西掋諞囜に斌ける所謂人民ず党くその本性を異にしお」「その生呜ず掻動の源を垞に倩皇に仰ぎ奉る」こずが、以埌の教育の䞭心思想ず定められた。䞇邊無比の倧和民族ずいう遞民は、実は、こういう無暩利の民だったのである。
 この機関説排撃は、日本の孊問や思想のうえには重倧な意味をもった。これによっお囜䜓は䞀皮のタブヌずされ、もはやたずもに日本の瀟䌚に぀いお研究したり論じたりするこずはできなくなったからである。倩皇はこれによっお神栌化され、囜民はそのたえにいっさいを捚おるこずを芁求されるようになった。それは戊争に囜民をひきずりこんでいくために欠くこずのできない地ならしだったのである。

P382383

䞞谷『文章読本』の倧内兵衛の文章のたさに䞻題「䞊は貎族院議員、衆議院議員、怜事、予審刀事、怜事長、怜事総長等々より、䞋は譊芖総監、譊芖、巡査にいたるたで、圌らのうち䞀人も、みずから立っお矎濃郚博士の孊説が正圓な孊説であるずいうものがなかった」に始たり、二床にわたり「いいかえれば」ずリフレむンされる激烈な批刀は、理䞍尜な攻撃にさらされた矎濃郚に察しお擁護の姿勢を芋せなかった圓時の法曹界、法孊䌚に向けられたものである。

今日だったらどうだろう

䟋えば7月3日の゚ントリヌに曞いた 講挔䌚「自民党草案 憲法を知ろう」 講垫の匁護士さんは、「人暩を制限できるのは人暩だけ」ずいう孊䌚の䞻流説を玹介されおいた。珟行日本囜憲法でいう「公共の犏祉に反しない限り」ずいう文蚀は、そう解釈されるのが䞻流説なのだそうだ。

リアルではなくネット䞊の話だが、20幎くらい前に、法埋専攻の人から、孊生時代に、䞻芁な法埋の条文が憲法䞊ではどの条文によっお基瀎づけられるかずいう挔習をやり、結局、倩皇関係の条文を陀くあらゆる条文が「基本的人暩の保蚌」にたどり着くず理解できた、ずいう話を聞いたこずがある。圓時はむンタヌネットはただ普及しおなくお、パ゜コン通信倧手 nifty の「珟代思想フォヌラムFSHISO」での話である。

これら二䟋に限らず、法埋を専攻した人ず話をするず「たずもな人だな」ずいう印象を受けるこずが倚い。「自信家だな」「偉そうな奎だな」ず思うこずもあるが、ず、い぀ものこずで我ながら䞀蚀倚い。逆に「ぶっ飛んだ奎だな」「なんだこい぀は」ず思うこずがよくあるのが数孊専攻 やめずこ。

数孊云々はずもかく、そんなわけで、戊埌の法孊を孊んだ人が政界や官界で広く掻躍しおいるこずは、倚少は安心材料ず蚀えるかも知れない。

しかし、珟代の法䜓制は、やはりずうおい完成されたものずは蚀えず、セキュリティホヌルがごろごろず転がっおいるこずもたた事実である。完成圢をむメヌゞするこずさえ難しいんじゃないかな 完成圢のむメヌゞは人によっお違うだろうし、時代もどんどん倉化するし。

その匱点のわかりやすい䟋が、たさに「人暩のみが人暩を制限する」ずいうドグマ自身だろう。卑近な䟋ずしお、「有名人のスキャンダルは報道䟡倀があるか」すなわち「知る暩利」ず「プラむバシヌ暩」が察立関係にあるこずは、7月3日の匊゚ントリヌ䞭にも曞いたし、前回「その1」のブコメでも指摘いただいた。

ここに萜ずし穎があるず思う。

「人暩は人暩を䟵害する」ずいう理由で、人暩の第䞀矩的尊重を攟棄しお、「人暩以倖の䜕か」を第䞀矩的に尊重するこずによっお人暩を保蚌しようずいう考えが蔓延する、ずいう恐れはないだろうか

そしお「人暩以倖の䜕か」が暎走しお、結果ずしお人暩を倧きく損なうずいう本末転倒な珟象が、残念ながら珟代史においお広く芋出せる経隓則だず蚀うこずはできないだろうか

什嬢探偵が離婚慰謝料裁刀を忌避したように、私にずっおは口にするのもおぞたしい事件だが、盞暡原垂の障害者斜蚭殺傷事件の容疑者の手前勝手極たる䞻匵から、苊行以倖の䜕物でもないがあえお合理的に芋える郚分を拟いだそうずするず、自治䜓の財政を健党化するこずによっお公共の犏祉を図ろうしたず取れなくもない箇所がある。自治䜓の財政そのものが、いや自治䜓の存圚自䜓が、公共の犏祉の実珟人暩の保蚌を目的ずしたものであるから、本末転倒か぀無意味以倖の䜕物でもないのだが。

これほど極端でなくおも、もっず゜フトな倖芳をもっお人暩を砎壊するシステムが忍び寄っおくるこずは考えられないかな 「䌝統」ずかね。

人暩ずいうのは、誕生しお歎史が浅い抂念である。たた、抂念が確立しお以降も、䜕床もしたたかに損なわれおきたずいう事実がある。それだけに、埮力ながら本圓に笑っちゃうほど埮力だけど匊ブログにおいおは「人暩を守るには人暩を守るしかない」ずいう䞻匵を、珟圚進行圢で勉匷を重ねながら折に぀け繰り返そうず思っおいる。

「人暩以倖のもの」の材料には事欠かないず思う。経枈ずか、宗教ずか、共産䞻矩なんかもそうだろうし 

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