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しいたげられたしいたけ

空気を読まない、他人に空気を読むことを要求しない

『ウミガメのスープ』の企画を出版社に持ち込んだときの企画書を晒す

前回のエントリーには、たくさんのアクセス、はてなスター、ブックマークコメントをいただき感謝しています。ありがとうございます。

なにぶん内容が内容だけに、今の時点では内容を晒すことはできません。エントリー中に書いた通り、最長で1年6ヶ月後、それ以前にポシャったとしたらその時点で明かすことを、改めてお約束します。公開するなら1年6ヶ月後にやりたいな。

代わりになるかどうかはわかりませんが、かつて『ウミガメのスープ』の企画を出版社に持ち込んだときの企画書を晒してしまいます。自分で書いて、ほぼ同一の内容を何社かに送付したものですので、公開するのに何の問題もありません。 

推理クイズ道場 ウミガメのスープ (電脳番外地)

推理クイズ道場 ウミガメのスープ (電脳番外地)

 

なんで今さらこんなことをするかというと、捕らぬ狸の皮算用ですが、もし特許を取得できたとしてもそれで終わりではなく、今度は企画書を書いて企業に持ち込まなければなりません。ジャンルの違いはありますが、数少ない私の手持ちの成功事例として、どんなことをやったかを思い出しておきたかったという次第です。つまり弊ブログのいつものことで、自分のためです。

保存用のCD-ROMを探して開いたら、意外と分量が少なかった。送り状がA4判1枚、趣意書(企画書)が2枚、あとは原稿だった。原稿はほぼネットのログを切り出したままのものだ。

原稿を除くとたった3ページしかなかったというのは、自分でもちょっと意外だった。

これが送り状。相手先出版社名や私の個人情報は、目隠しさせてもらっています。

f:id:watto:20170214230931p:plain

テキストをコピペする。

平成14年■月■日
■出版社名■
編集部 御中

拝啓 秋冷の候、貴社いよいよご清栄のこととお慶び申し上げます。
 さる■日、貴社編集部様に問い合わせの電話をさせていただいたものです。企画の持ち込み先を探しております。
 インターネット上で、シチュエーションパズルまたはLTP(ラテラル・シンキング・パズル)と呼ばれる形式のクイズゲームが最近にわかに人気を集めています。これを書籍の形式でも世に送り出すことはできないかと、勝手ながら貴社『■相手出版社のシリーズ■』を想定した400字詰原稿用紙に換算して340枚ほどの原稿にまとめてみました。原稿は叩き台のつもりです。分量は、減らすことはもちろん、大幅に増やすことも可能です。
 ご多忙の折まことに恐縮に存じますが、お時間に余裕がある折にでも、お目を通していただき貴社にて商品価値があるかどうかご判断いただければ、望外の幸いに存じます。
 末筆ながら、貴社の益々のご発展をお祈り申し上げます。
敬具
送付内容
趣意書『LTP(ラテラル・シンキング・パズル)とは』…2ページ
原稿『恐怖推理ゲーム ウミガメのスープ』…40字×40行×86ページ
以上

■当時の所属■
■wattoの本名■

(連絡先・自宅)〒■■■
■当時の住所(転居済み)■
電話(FAX共) ■当時の電話番号(変更済み)■
PHS ■当時のPHS番号(廃止済み)■
電子メール■■■@■■■

趣意書(企画書)の1ページ目。URLだけ目隠ししてます。

f:id:watto:20170214230932p:plain

テキストは2ページ分全部貼る。

趣意書 LTPとは

本書の内容は、同梱の原稿『恐怖推理ゲーム ウミガメのスープ』末尾のコラム「LTPって何だろう?」と内容的に同一です。
LTPとはラテラル・シンキング・パズル(lateral thinking puzzule)の略で、日本語に直訳すると「横方向思考パズル」です。

LTPとは、一言で言えば、インターネット上で対話型で解いてゆくクイズゲームです。

海外では10年以上の歴史があるようで、多数の関連書籍も出版されています。
(代表的なサイトのURL)
“Lateral Puzzles Forum”
■URL■
“Paul Sloane's Page”
■URL■
"Situation Puzzles List"
■URL■

日本では、今年7月に「2ちゃんねる掲示板」にスレッドが立ち、3ヶ月間で延べ約8万発言が登録されるほどの人気を集めています(■年■月■日現在)。
(関連URL)
「オカルト超常現象@2ch掲示板」
■URL■
「ウミガメのスープ過去ログ倉庫」
■URL■
「ウミガメのスープ雑談掲示板」
■URL■

海外のサイトでは、ラテラル・シンキングはロジカル・シンキング(logical thinking)と対比させる言葉として使われています。ロジカル・シンキングとは論理的思考のことです。両者は対立的なものではなく相補的なものとしてとらえられています。
問題の実例を示しつつ、両者の違いを考えてみたいと思います。
ロジカル・シンキングすなわち論理的な思考を要求されるパズルの一例として、次のようなパズルを眺めてみたいと思います。
【問題】ここに金貨が10個ある。ただしそのうち一つは偽の金貨である。本物の金貨はすべて同じ重さで、偽の金貨は本物に比べてわずかに軽い。そしてここに天秤式の秤がある。この秤を2回だけ使用して、偽の金貨を見つけるにはどうしたらいいか?
有名なパズルですから詳細な解答は省略しますが、概略のみ記せば、10個の金貨を3個・3個・2個の組に分割して、まず3個の組同士を秤に乗せるというものです。
ラテラル・シンキング・パズルの例として、原稿の「はじめに」に示したウミガメのスープの問題と比較してみましょう。
【問題】男がレストランでウミガメのスープを注文して一口食べた。その後、男は自殺した。
前者は、問題文中に解答を出すのに必要な情報がすべて含まれています。一方後者では、問題文中に含まれる情報だけから解答を導き出すのは絶対に不可能です。正解にたどりつくためには、問題文中に含まれていない情報を、会話により引き出す必要があります。いずれの問題を解くにも試行錯誤は必要ですが、前者は孤独な作業で解くことができます。後者はそれができません。

ロジカル・シンキングとラテラル・シンキングの違いがこれまでそれほど意識されなかったことは、ほかならぬ「ラテラル・シンキング」という言葉の認知度が物語っています。例えば推理小説にはどちらの要素も含まれていますが、推理小説の読者は両者を区別する必要をそれほど感じることはなかったでしょう。情報を収集する過程も集めた情報から結論を導く過程も、どちらも小説の中に含まれているからです。インターネット上で出題者と参加者がリアルタイムに双方向で情報を交換しながらパズルを解いていく形式が定着したとき、サイトに集った人たちはロジカル・シンキングとラテラル・シンキングをより厳密に区別する必要があることに気づいたのだと思われます。

そして、現実の世界を探訪するにあたって、このラテラル・シンキングの能力が要求される局面は意外に多いようです。現実の世界で、我々の前に現れるのは個々の事象です。それらの事象をつなぐストーリー(認知心理学では「スキーム」と呼ぶそうですが)は、自明な場合もあれば、なにがしかの努力をしなければ発見できない場合もあります。そして、その個々の事象をつなぐストーリーは、もちろん関係者により意図的に、または偶然の手により巧妙に、隠蔽されていることもありますが、我々が「質問を発する」という働きかけを行うことによってあっけなくその姿を見せてくれることのほうが実は圧倒的大多数なのです。インターネットで検索すると、効果的なインタビュー=聞き取り調査によって必要な情報を得るためのトレーニングとしてLTPを採用する試みが、あちこちで始まっていることがわかります。

ただし原稿に収録したのは、必ずしも典型的なLTPばかりではなく、なぞなぞ、ダジャレ的なものからかなり本格的なLTPまで、わざとごちゃまぜにしています。共通点は「参加者が出題者に質問し、対話で解いてゆく」というルールだけです。いたずらに門口を狭めることによって未開拓の可能性を損なうことを恐れ、そうしました。

読者の方々にとって、仲間との話題のタネ本にできるようなものになれば、と希望しています。

13年ぶりに読み返してみると、これが企画書として適切なフォーマットだったかどうかは、我がことながら大いに疑問である。ただし、どっかで「企画書に特定のフォーマットというものはなく、趣意が相手に伝わればいい」ということを読んだことがあるので、まあいいのだ。

これを、当時ホームページで持ち込み企画を募集していた出版社何社かに送付してみた。3社目が、ちょうど直前に西村博之氏の『思い出に残る食事』を出したところで、興味を示してくれ、担当の編集者をつけてくれた。

ただし、原稿は全部書き直すことになり、実際に出版にこぎつけるには、それから1年以上かかった。

だが、直後に本家ともいうべき『ポール・スローンのウミガメのスープ』の翻訳書が他社から出たり、他にもいろんなごたごたや不運があったりして、私が出版にかかわる機会は、これきりで途絶えてしまった。一言で言えば、期待したほど売れなかったってことだ。

めげずに今でもあれこれやってるけどね。

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