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しいたげられたしいたけ

空気を読まない、他人に空気を読むことを要求しない

『アナと雪の女王』ハンス王子いい奴説というのを半ば本気で主張してみる。そして思い出した意外な人物

他の方のブログやホッテントリ―に便乗して記事を書くことが多いです。今回は おおた(id:ohtanoblog)さんの、この記事に勝手に乗っからせてもらいます。

www.hamashuhu.com

「はてなブログ」には読み応えのあるレビュー記事を書くブロガーさんがたくさんいらっしゃいますが、おおた さんもそのトップレベルのお一人だと思います。「君の名は。」を万葉集や小野小町とともに論じた記事 もよかった。なお『アナと雪の女王』の地上波放送に関しては、別の話題もホッテントリを賑わせていますが、私はそっちはパスします。

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おおた さんの『アナ雪』記事に、こんなブコメを投入した。100文字では足りなかったので、自分のブログの記事として補足したい。以下、ネタバレを含みます。

映画「アナと雪の女王」感想 オラフの台詞が一番好き - 横浜女が滋賀で主婦する

逆張りで「ハンス王子いい奴説」を主張しようかな? 「13番目の王子に王位継承の望みが薄いのは自明」「アレンデールでは善政を敷いた」「あのタイミングで嘘を通すこともできた」「偽りの愛を捨て自己犠牲を選択」…

2017/03/06 01:16

b.hatena.ne.jp

以下、自分のブコメを箇条書きにして、内容を敷衍してみる。

13番目の王子に王位継承の望みが薄いのは自明

ハンス王子は、アナとエルサの国アレンデールの隣国サザンアイルズ王国の王子で、国王の13番目の末子である。エルサの戴冠式の来賓として招かれ、初対面のアナに結婚を申し込む。

ちょっと歴史が好きな人間なら、ここでピンと来るはずだ。日本でも江戸時代までは、武士の家庭の次男坊以下は冷遇された。世に出るには、兄が嫡子を残さず早世するのを期待(?)するか、他家の婿養子に入るしかなかった。いや明治以後の商家や農家でも、事情は似たりよったりだった。これは、封建システムにおいては世界的な現象なのだ。

ハンス王子がアナ王女に接近したとなれば、アナ自身は知らず、衆目は一瞬で王子が何を企んでいるか理解したであろう。

アレンデールでは善政を敷いた

物語半ばまでのハンス王子の有能さは、目を見張るものがある。エルサ女王とアナ王女が相次いて出奔し、アレンデールの国政を任せられると、最初にやったことは、突然の異常気象に苦しめられる国民を助けるため、国庫を開いて救恤〔きゅうじゅつ〕に努めたことだ。

もしハンスに野心があれば、このときエルサとアナを締め出してアレンデールを乗っ取ることもできたはずだ。歴史に類を求めると、私は常々、徳川家康のすごかった点の一つは、本能寺の変、伊賀越えの直後、秀吉と柴田勝家が信長の後継争いをしている間に、本能寺の直前に滅んだ武田家の遺領を完全に支配下に収めたことだと思っている。専門家は知らず、なぜ歴史ファンはこれをあまり評価しない? 他にもアレクサンダーの部下のプトレマイオス将軍が、アレクサンダー没後、エジプトに国王として居座ったことや、ナポレオン麾下のベルナドッテ将軍が、フランス大革命終焉後のスウェーデン国王に収まったことも想起する。現実の歴史は、主なき領土を放置するほど甘くないのだ。

それから氷の城における部下を率いての奮戦も、悪役のイメージじゃないよね。正体不明かつ体格ではるかに勝る雪男マシュマロウ相手に、一歩も引かずに戦いついには討ち倒したり、氷の超能力で容赦ない攻撃を仕掛ける女王を、一切傷つけることなく身柄確保したり。あとでヴィランだと判明するなら、もうちょっと伏線を撒いとけくらいは言いたくなる。

あのタイミングで嘘を通すこともできた

つまりハンスが国を乗っ取るチャンスはいくらでもあったと言いたいわけだが、最大のチャンスはここだろう。心が凍る魔法を解くために、真実の愛のキスを求めるアナに、自分が野心家であることを告白する必要は一切なかった。そのまま凍らせてしまったほうがよかった。そしてエルサを弑すなり幽閉するなりすれば、野望は成就である。

歴史に類例を求めるなら…やめとこ。数が多すぎて選びきれんわい。東西の王朝交代は、そんなパターンばっかりやないかい。つまり代替わりの混乱その他で既存の王朝が弱体化したのに乗じて、有力者が簒奪するってことね。

逆に言えば、なぜそうしなかったかというのが物語の最大の謎とも言えよう。それに対する回答の一つが、「ハンス王子には野心はなく、それどころか実は徹底的にいい奴だった」という仮説である。

偽りの愛を捨て自己犠牲を選択

『アナ雪』の物語世界において、心が凍る魔法に侵されたアナを救うことができるのは、真実の愛だけだった。

ここでハンスの立場に立って考えてみよう。

自分はアナを本当に愛してはいない。つまり自分のキスではアナを助けることはできない。

ならば、アナを助けることができるのは誰か? ただ一人いる! 血を分けた肉親であるエルサだ!

しかし姉妹はいま仲違いをしている。姉妹を和解させることが、アナを救うことにもつながるのだ。

でも、どうやって? 一番手っ取り早いのは、彼女らにとって共通の敵を作ることだ! 共通の敵の前では団結することができる。だがそんな都合のいい敵が、どこにいる?

ここにいる!

そしてあの唐突な豹変につながるのである。

しかし、なぜハンスはそんなことをするのか?「自分が相手のことを愛していなくても、自分を愛してくれた相手を守るために、命を捧げてもいい」と考えるようなバカな男が、いたっていいじゃないか! 現実はいざ知らず、物語世界の中であれば。

現実の姉妹というものの関係についても、ここではパス。怖くて触れん。

10年以上前にマンガ『DEATH NOTE』を読んだときに、そんなことを考えたことがある。あのマンガでは、主人公の夜神 月〔やがみ らいと〕は、自分に想いを寄せるヒロイン弥 海砂〔あまね みさ〕を、とにかく徹底的に利用するのだ。

あんまり一般性はないと思うが、私はあのマンガを読んだとき、三島由紀夫の諸作品を強く想起した。三島の小説にもやはり、主人公を慕う相手が主人公から徹底的に邪険に扱われるというパターンが多いのだ。『仮面の告白』の草野園子や『天人五衰』の浜中百子のように。

検索したらエントリーを残していた。いあ読んでもらうほどの内容はない。

最近、読書日記が少しお留守になっているが - しいたげられたしいたけ

もしデスノのミサミサや(←今の若い人に、この略称、通じます?)、三島の諸作品に登場する女性たちのように、自分に想いを寄せてくれる相手がいたら、仮に自分が相手のことを好きでなかったとしても、その相手を守るために自分の一生を捧げてもいいと考えるような登場人物って、創作できないものかと思ったのであった。

そして首尾よくその願いを達成したとしたら、その登場人物はどうするのだろう? 一つ考えられるのは、道化キャラ、ギャグキャラとして、笑いを取りつつ舞台から去っていくというパターンである。

おるやん。『男はつらいよ』シリーズのフーテンの寅さんだ!

今でも熱心なファンが多くいるこの映画シリーズだが、実は私はそんなに好きではない。人気が出てから「寅さんはいい奴だ」ということが知れ渡ってしまったため、初期の頃の「こいつはヤバい奴だ!」という緊張感が、どっか行ってしまった。つか主人公がヤクザだという設定どうなった?

しかしネ申作品としか言いようのない回があることも、確かである。

ハンス王子にその役割を担わせて、ラストでボロボロになりながら、側近に「これが騎士道というものだよ」あるいは「これがノブレス・オブリージュというものだよ」などと打ち明けて、故国目指して去っていくカットなんぞを挿入したら、前半との整合性も取れたんではなかろうか?

あるいはここで、おおた さんも一番好きとおっしゃるオラフの言葉を、異口同音にリフレインさせてもいい。「真実の愛とは、自分よりも誰かを大切に思うこと」。

台無しですか? 

今さらながらの追記:

あれからさらに、妄想をふくらませたのでメモ。

伏線は、戴冠式でハンスがアナを最初に見たとき、側近に一言「田舎臭い娘だな」と告げる程度で十分だと思う。側近に「都会の水で洗えば驚くほどお綺麗になりますよ」とかフォローさせるのは、蛇足かな?

ラストで同じ側近に対し「これがノブレス・オブリージュというものだよ」と強がるハンスに対し、側近はこう返す「いえ、殿下はアナさまのことを本当に愛していらっしゃったのです。本当の愛とは、自分よりも誰かを大切に考えることなのですから」

それを聞いたハンスは、初めて自分の気持ちに気づき、まずは「最後くらいいいカッコさせろ~!」と側近の首を絞め、次に側近を抱きしめ大粒の涙を雨降らすマンガ泣きしながら、画面からフェードアウトするのである。

シナリオくらい書いてみたくなったぞ。ディズニーは許してくれっこないから、他のと混ぜて「氷城主穴雪」とかいう何のパロディだかわからんタイトルで。