3月30日のエントリーへの補足みたいなものです。甚目寺観音の境内にある日吉社という神社には、明神鳥居と神明鳥居の両方が立っているということを書いた。実はその他にも、近所の神社にも同様の例があることに気づいていた。時系列としては、実はこちらに先に気づいた。他人にはどうでもいいことだが。
市内にある「鹿嶋神社」という、何の変哲もない神社である。私の散策路のうちでは、最も遠方にある。これも他人にはどうでもいいことだが。
本殿前の鳥居は明神鳥居であるにもかかわらず…
一の鳥居と言うのだろうか、境内に入るところに設けられた鳥居は、神明鳥居なのだ。
大相撲で例えると、初代、二代目の若乃花が雲竜型でも三代目が不知火型であってもいいし、師匠の隆の里が不知火型でも稀勢の里が雲竜型であってもいいみたいな…しつこいですねすみません。
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本殿に由緒を記した書板が掲額されていたので、撮ってしまった。
由緒書きを文字起こししてみる。
由緒
祭神 建御雷神
當社ハ古クヨリ鎌倉街道ニ村驛ノ内宿一帯ノ産土神ニシテ地方ニ知ラレタル古社ナリ
(二村ノ驛ハ沓掛本郷ト沓掛宿ノ二ヶ村アリシニ依リテノ宿場ヲ二村ノ宿ト云ウ)
一説ニハ當社ハモト川嶋神社ト云ヒ延喜式記載ノ川嶋ノ社ナリトコ考證家研究申也カハシマガ後世カシマニ轉化シタルモノナリコノ事知名鈔國史考等ニ見エ、當地方ニハ鎌倉時代以前ノ古跡史跡ニ當ム今尚當社ノ氏子ハ字宿字新井字寺内字山田ト廣凡ナル地域ニ匡リ且四ヶ村ニテ奉齋スルハ此ノ地方二例ナキコトニシテ當社ノ由緒ノ並々ナランヲ知ルニ至ル
「尾張國最古ノ社川嶋神社(今ノ鹿嶋神社トイフ)モアリ本来ハ水ノ神みづはめの神ヲ祭神トシテイタ」二村考(尾崎久弥著)ハ大河ナク住民昔ヨリ水ニ苦労シ大小ノ池(勅使ヶ池始メ七池アリ)宿ノ地名古クハ川嶋ト云ヘリ山田郡両村(延喜式和類聚抄)トアルハ今ノ豊明村大字沓掛字本郷ト字宿(古クハ川嶋)ニシテ宿ノ北端ナル鹿嶋神社ハ旧称川嶋神社ト称エ延喜式ニハ山田郡川嶋神社本國帳ニハ從三位川嶋天神ト称ス
旧祭神水波賣神ヨリ建御雷神ニ変リシハ幾時カ不明ナレドモ本郷村武建御命名ヲ祀リ諏訪大神ハ強イ強イト云ヒシニ對抗シ宿ノ住民我ガ武神建御雷命ガ鎮マス鹿嶋ノ大神ノ方ガ強イ強イト對抗セシニ依ルト云フ
『延喜式』というのは神社の格式を定めた書で、なんと平安中期の成立なのだ!
「二村」、「本郷」、「沓掛」…というのは、市内に現存する地名である。
乱暴に要約すると
- この鹿嶋神社は、元々は川嶋神社という名前で、「かわしま」→「かしま」と転化したらしい
- 祭神も、元々は「みずはめ神」(水神または水波売神)という産土神(「うぶすなのかみ」=土着の神様)だったが、近所にある諏訪神社の諏訪大神に対抗するため、より強そうな建御雷〔タケミカヅチ〕神に改めたと言われる
と、なんかすごいことが書いてある。名前を変えるのはまだいいとして、祭神まで取り替えてしまってもいいものなのか? 大相撲で例えるとしたら…やめとこ思いつかん。
本殿には、こんな張り紙があった。一応、住所と電話番号は消しました。検索すれば出てくるかもだけど。
今はその諏訪神社が、ここの宮司も兼ねとるんかいっ!(^▽^;
まあ周知のごとく、宮司を常駐させられる神社は、限られた一部だから仕方ないのか。
言っちゃ悪いが、その諏訪神社だって、おそらく元々は地元の神様で、なんらかの経緯で諏訪大神に比定されてしまった可能性がある。
あと文言にさりげなく伊勢神宮が混じってるけど、本来、伊勢、鹿島、諏訪は別系統の神様であるはずだ。
また、この鹿嶋神社もそうだけど、市内の神社には境内に摂社末社末社をいっぱい抱えるところが多い。それらの摂社末社には、「伊勢神宮」「鹿嶋神社」「諏訪神社」「秋葉神社」「津島神社」等々、全国の有名神社の名札が掲げられている。
それらは本当にそれらの神社から分祀されたものかも知れない。しかし以前も一度、弊ブログに書いたことがあるが、神坂次郎『縛られた巨人―南方熊楠の生涯』には、明治期に各地で郷社村社の大規模な整理が行われ、南方熊楠はそれに反対して乱闘騒ぎを起こしたと書かれている。独立した土着の神社だったところが、近辺の比較的大きな神社の境内に集められ、由緒も忘れ去られてよくわからないところが多かっただろうから、その際に適当に有名神社の名前を付けられたのかも知れない。
そゆえば諏訪神社にはお参りしてないなぁ。こんどお参りに行こう。マップで調べたら徒歩はキツいが、なに自転車もスクーターもある。
* * *
内容的に関連は薄いが、散策した日に路すがらのカワヅザクラが見ごろだったので、ついでと言っちゃ悪いが撮ってしまった。
道路沿いの畑のような敷地に、突然咲いていた。どこかに移植するために植えているのだろうか? それともこの場で楽しむために植えたのだろうか?
何にせよ、通りすがりの人間の目も楽しませてくれるのは、ありがたい。
接写。
角度を変えて、もう一枚、接写。
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