🍉しいたげられたしいたけ

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浅田次郎『プリズンホテル〈1〉夏』(集英社文庫)

プリズンホテル 1 夏 (集英社文庫)

プリズンホテル 1 夏 (集英社文庫)

psi.webの紹介を見て、読んでみました。
主人公は自衛隊上がりの小説家で、経歴は著者を彷彿とさせるが、性格はとんでもねー嫌な奴にデフォルメされている。この主人公が、叔父であるヤクザの親分の経営するホテルに投宿するのだが、その宿に集まる人物ときたら、一徹者なるがゆえに飛ばされたホテルマンあり、実は名門・マニラ大卒のじゃぱゆきさんあり、心霊マニアのシェフあり、熟年離婚を胸に秘めた夫婦あり、一家心中を決意した家族あり、珍走団あり、ヒットマンあり、しまいには浅田ワールドの最終兵器・幽霊まで出てくる。主人公の一人称による章と三人称の章が交互にカットバックされる手法も読みやすい。
が…正直私はあんまり楽しめなかった。身内から一人のヤクザ者を出すだけで、あるいは身内から一人の長期療養を必要とする病人を出すだけで、人生の色合いというものが、がらりと変色してしまうことを知ってしまうほどに年を取ったからなのかもしれないし、またかくも過酷な人生というものを、笑い飛ばすのが小説なのだということがわかるほどには老成していないからなのかもしれない。
追記:
もっと正直に具体的に言うと「倒産」というのがダメなのだ。まだ笑い飛ばせない。
私の体験は、ネガティブな性格が幸いして何重にも張ったセーフティーネットというか防衛線の最初の方のにひっかかった程度で済み、生活ができなくなったわけでも借金をこさえたわけでもないのだが、それでも地獄の底の深さを垣間見た思いがした。