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藤沢道郎『物語 イタリアの歴史〈2〉皇帝ハドリアヌスから画家カラヴァッジョまで』(中公新書)

物語 イタリアの歴史〈2〉皇帝ハドリアヌスから画家カラヴァッジョまで (中公新書)

物語 イタリアの歴史〈2〉皇帝ハドリアヌスから画家カラヴァッジョまで (中公新書)

物語イタリアの歴史―解体から統一まで (中公新書)』が良かったので、読んでみた。期待にたがわず五つ星。
中公新書の物語歴史シリーズはタイトルは共通でもスタイルが全然違うのだが、この著者のものは何人かの人物を選んでその生涯をたどってゆく。思うに歴史とは個々の人間の生活の積み重ねにほかならず、歴史を俯瞰すると時代時代の特徴というか何か「歴史の法則」のようなものは確かに存在するとは思うのだが、そして個々の人生から「歴史の法則」を抽象する作業はさぞかし楽しいことだろうとは思うのだが、そうした歴史学者により抽出された「歴史の法則」を最初から与えられたら読む側としては退屈でたまらん。
本書に登場する8人のエピソードはどれも面白いのだが、私がとりわけ好きなのは「第二話 大教皇グレゴリウスの物語」である。紀元六世紀、ローマ教皇はまだ後世のような絶対的な権威を確立していなかった。著者は教皇襲位前後のグレゴリウスが直面した困難を4つにまとめる(p30〜32)。すなわち(第一)当時はまだコンスタンティノープル司教、アレクサンドリア司教などがローマ教皇と同等の権威を持つとみなされていたこと、(第二)いわゆる「異端」のアリウス派を奉じるランゴバルド族がイタリア半島の2/3を支配していたこと、(第三)そのランゴバルド族は一人の王により統制されていたのではなく群雄割拠の状態で、戦うにしろ交渉するにしろ適切な相手を選ぶのが困難だったこと、(第四)頼りにすべき国家機構が存在せず、教会自らが世俗の国家の役割を担うしかなかったこと。
襲位したグレゴリウスは、これらの難題を人の意表を突くやり方で一つ一つ鮮やかに片をつけてゆく。
物語イタリアの歴史―解体から統一まで (中公新書)

物語イタリアの歴史―解体から統一まで (中公新書)