バラの花が「女性」というのは動かない解釈だと思ったけど、サン=テグジュペリの妻コンスエロのいわゆる「悪妻伝説」はこの本で初めて知った。p61以降、かなりのページが割かれている。
『星の王子さま』には戦争が色濃く影を落していることも衆目が一致するところだと思うが、ウワバミがえものを呑み込むと消化されるまで半年間動かずにいるというのは、オーストリア併合など1930〜40年代のドイツの軍事行動がほぼ6ヶ月周期で繰り返されたことと一致しているという指摘(p11〜13)や、三本のバオバブはドイツのナチズム・イタリアのファシズム・日本の帝国主義を表したものだという著者の考えの表明(p13〜16)は、へぇ、という感じ。
他にもバラのトゲの数が四本であることにはどういう意味があるかとか、さまざまな解釈が紹介されている。なるほどと思うものもあれば、にわかには同意したものか迷うものもある。
著者は大学のフランス語と文学の授業で教材として『星の王子さま』を使い、70回は読み返し、その都度新しい発見があったという。「エピローグ」の、読書は読者の力量を試すものであり読書とは怖いものだという著者の言葉(p157〜)には、はっと考えさせられる。
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