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竹内薫『超ひも理論とはなにか』(講談社ブルーバックス)

超ひも理論とはなにか―究極の理論が描く物質・重力・宇宙 (ブルーバックス)

超ひも理論とはなにか―究極の理論が描く物質・重力・宇宙 (ブルーバックス)

99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 (光文社新書)』を売った著者は、肩書きはサイエンスライターとなっているが、もともとは物理学畑の人らしい、ということで読んでみた。
「はじめに」によると、「超ひも」とは世界で一番小さな「物質の素〔もと〕」で、大きさは10のマイナス33乗センチメートルくらいしかないのだという。ちなみに水素原子のサイズは10のマイナス8乗センチメートル、水素の原子核である陽子一個のサイズはサイズは10のマイナス13乗センチメートル程度なのだそうだ。しかもこの「超ひも」は、11次元の空間内を振動しているという。「ボゾンひも」と呼ばれるものに至っては、26次元(!)の存在なのだそうだ。
で、なんでこんなものが理論物理学の世界に登場したかというと、これを導入することによって、未解決の一般相対性理論と量子力学の統合が可能になるかも知れない(p58〜)というだけでなく、これを用いて計算されたブラックホールのエントロピーの値(なんじゃそりゃ?)が、先行するホーキングの結果と完全に一致した(p146〜)のだという。
正直に告白すると、数式を使わず(と言っても初等的な数式はしょっちゅう出てくるが)喩えを用いて説明する著者の語り口は易しく、事前に恐れるほど読み通すのに苦労はしなかったけど、読み終わってから「さて、では超ひもとは結局何だったのでしょう?」とテストされると途端にもごもごと口ごもらざるを得ない。本書が執筆された2004年春の時点における理論物理学の到達点を、あくまで門外漢向けに易しい言葉で語ったものであって、読者は著者の説明が正しいのかどうか自力で判断をおこなうことができないのは、あたかも巫女のご託宣を聞くがごとくである。
と、言ってしまうと身も蓋もないけど、著者の物理学の力量が並々ならぬものであろうことは、例えば「エントロピーの増大は情報が失われる過程と言い換えることが可能だ」(p111)とか、「相対論は座標軸の回転の理論だ」(p248)とか、物理的意味の簡潔で的確な説明からうかがい知ることができる。あとどこだったか探しきれていないけど、運動量は空間と同じ三次元の量、エネルギーは時間と同じ一次元の量という意味の説明も、言われてみればそりゃそうなんだけど目からウロコだった。物理の本を読んで自力でこういう表現を引き出すことは、私なんぞの力ではとうてい叶わない。
こういう本を読んでテンションを上げて、数式のある専門書にチャレンジするのが正しい道なのかな、と、結局いつもと同じ結論にたどり着いてしまうのである。
99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 (光文社新書)

99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 (光文社新書)