- 作者: 渡辺光一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/03/20
- メディア: 新書
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イスラム神学生とは言いながら、難民キャンプ周辺に急造の神学校で、コーランを読み上げるだけの狭隘な宗教教育を受けた若者たちを、著者はオウム真理教徒や中国の文革の紅衛兵と比較している(p159〜160)。
タリバーンは進出の始まった94年から97年のわずか3年の間に国土の7割を統治(p172)するが、国家権力を掌握すると、官公庁から彼らと同じパシュトゥーン人以外の公務員を追放(p175)したのを手始めに、著者が「イスラムの教義に合致しているとは思えない」(p176)と評する禁欲的で抑圧的な政策を次々に打ち出す。
さらにはイスラム圏から参集した義勇兵の中から、ウサマ・ビンラーディン率いる国際テロ組織アルカイーダが出現したことは、当初のパキスタン政府の思惑をはるかに超えたことであったろう。
そもそもの発端をたぐれば、19世紀末、数次の「アフガン戦争」を経てこの国が独立する際に、以前の宗主国であるイギリスと当時の王室が画定した国境線は、この国に最大人口比を有するパシュトゥーン人の居住地域を人為的に分断するもので、「民族の歴史と分布をまったく無視したものであった」(p70)ことが、さまざまなトラブルの種を捲いたのではあるまいか。
同じような事情はイラクにもあったし、ちゃんと調べたわけではないが、おそらくスーダンも似たり寄ったりであろう。アングロ・サクソンの悪筆とでも名づけるべきか。なんともやりきれない話である。