予約が入らず休日。今月は休みが多いな〜(汗
以前から興味があった、多治見市の岐阜県現代陶芸美術館 というところでやっている「ウェッジウッド〜ヨーロッパ陶磁器デザインの歴史展」というのを見に行くことにする。
岐阜県が皮切りってのが、なんとなく気分がいいじゃないか!
実は私は岐阜県出身のくせに、多治見市は通過するばっかりで降り立ったことは一度もなかった。近年「日本一暑い町」として全国的に知名度を上げたこの地方都市を、一度くらいは訪れておきたいと思っていた。
(近県在住の人はご存知だと思うが、岐阜県美濃地方は、多治見土岐瑞浪恵那中津川の東濃地区と岐阜大垣各務原などの中西濃地区は、愛知県の領土で分断されているのだ。鉄道にせよ車を使うにせよ、名古屋を経由するほうが早い。あ、中央自動車道は名古屋市内には突入しないか)
久しぶりにJR中央本線に乗る。名古屋から放射状に出てゆく鉄道網で、中央線ほどエキサイティングな路線はない。最短距離で山ン中に突入するのだ。都会暮らしの人間は、山が緑に見えるほど近くなると、理屈はよくわからないがとにかく感動するのだ。いやうちは郊外だから全然都会じゃないけど。
そんなわけで、多治見市の第一印象は「緑が間近に迫って美しい街だな」ってことだった。駅の跨線橋から見回すと、みごとにぐるり360度、山に囲まれている。雨水がたまったら湖になるんじゃないかと心配になるくらいの、みごとな盆地地形なのだ。はいはいフェーン現象フェーン現象。標高が低くだだっ広い濃尾平野でたっぷり温められた南風や西風が進入したら、ただごとではすまないのは容易に想像がつく。標高が意外と高く周りは山ばっかりの京都に、7年ほど住んでいたことがある。京都の夏は、それでもやはり暑いので有名だ。
駅前にバス案内所があったので、足を尋ねる。「ききょうバス」というのが正時に出ると教えてくれた。「ききょうバス」というのは市営のコミュニティバスだが、ご親切なことにフロントガラスに「誰でも乗れます」という表示を出している。マイクロバスである。
乗り込むと運転手さんが一日券を勧めてくれた。片道200円だが一日券だと300円で乗り放題とのこと。これは買って正解だった。後で知ったのだが、岐阜県現代陶芸美術館からバス停一つの距離に「岐阜県陶磁資料館」という別の施設があり、共通券を売っていた。共通券は当日1500円。これでさらにもう一つ、岐阜県現代美術館と同じ建物内に「オリベスクエア」というのがあって、そこでやっている「国際陶磁器フェスティバル」というのにも入れるらしい。ウェッジウッド展単独だと当日1000円。他に予定があるわけでなし、共通券を購入。これで「ききょうバス」一日券も元を取った気分になった。
で、ウェッジウッド展なのだが、これが期待以上によかった!ホームページのトップに掲げられている「ウェールズ公の壷」のレプリカが会場入り口に展示されているのだが(実物は会場内にある)、さっそくそこで、ぴたりと足が止まる。空の青を思わせる地肌の美しさよ!ちらしの解説によると「ジャスパー」という技法だそうだ。
もともと私は陶芸にさして興味があるわけではない。しかし、瀬戸・美濃・常滑など中部地方は名陶、名窯が目白押しで、必然いろんな作品を目にする機会が多くなる。織部、黄瀬戸、志野という名には、知らず知らずの間に親しんでいる。これら日本の焼き物は、人工物なんだけど、自然の造形を理想としそれを人間の手で模すことに情熱を傾ける。
いっぽう多分ウェッジウッドに限ったことではないと想像するのだが、欧米の陶芸は、白はあくまで白く、円はあくまで真円に近く、とことん人工の美を追求しているように思われる。
同じ陶磁器というジャンルで美を追求しているのに、両者は相容れるところを探すのが難しいんじゃないかと思うくらい、ベクトルが違っている。
しかし、ウェッジウッドはそれでも日本や東洋の影響をしっかり受けている。竹など日本風の素材を模した作品や、唐獅子、中国風の風景を描いた皿なども展示されていた。ジャパネスクと銘打って、さきの「ジャスパー」という素材で作られた茶道・華道・書道の道具もあった。
うまいぐあいに岐阜県陶磁器資料館の方の企画展が「桃山陶展」で、織部、瀬戸黒、黄瀬戸、志野、志野織部を並べてくれていた。両者を頭の中でじっくりと比較することができた。
私は自分に大した美的センスがあるとは思わない。他人が美しいというものの美しさがわからないことは、しょっちゅうである。だけど自分なりに美しいと思うことはある。ウェッジウッドの何点かは、文句のつけようがなく美しいと思う。日本の陶芸も、美しいと感じるものはいくつもある。両者の美の異質さ、美の方向性の違いを引き比べて迷子のようになるのも、楽しみ方の一つとしてアリなんじゃないかなと思った。
追記:
「ウェッジウッド展」のちらしの画像が残っていたので、参考のため貼ります。