- 作者: 佐藤勝彦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/11/20
- メディア: 新書
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私の実力では手際よく要約できないので、例によってとりとめもなく印象に残った箇所をランダムにメモ。
まずは宇宙のサイズから。
私たちの宇宙が三次元トーラスだとしても、その大きさの桁は一〇〇億光年以上であろう。多くの宇宙論の書物ではトポロジー的議論は避けて、簡単に曲率がゼロや負なら宇宙は開いている、つまり宇宙は無限に広がっているとしている。
(p25)
宇宙が無限なら無限でいいだろう。仮に宇宙が閉じていたとしても、曲率がゼロでないということは「より高次元」の存在が示唆される。いずれどこかの次元で「無限」と対峙しなければならない。
目下の私の疑問の一つは、宇宙がビッグバンで始まったのなら、どの時点で有限から無限になったのだろう、ということである。宇宙のインフレーションは本書のメインテーマの一つで、随所で議論が行われているが、その前提にあるのが量子力学と相対論の知識であるので、いつもの通り隔靴掻痒というか私の頭脳では議論が素通りである。
量子力学と相対論は、そのうち勉強しなくちゃと何度思ったことか…いや私だって理系出身者のはしくれ。学部時代に一次元シュレディンガー方程式の変数分離法による解法くらいは習ったのだが、そんなもんで歯の立つ相手ではない。
あと『ここまでわかった宇宙の謎 (講談社+α文庫)』に「ポジトロニウムで構成された生命体」という話題が出てきたが('08/2/11のエントリー参照)、本書によるとそれを考えたのはフリーマン・ダイソンという人で、定員オーバーのためノーベル賞の朝永振一郎と同時受賞を逃した人らしい。けっこう古い話なんだ。なおダイソンは中性子星に住む生命体の可能性も論じている。こちらは1秒程度の寿命で生涯を終えるが、ポジトロニウム生命体とは逆にクロック時間が極めて速いため「一生の間に処理した情報量は人間より桁違いに多くなる計算である。私たちより多様で豊かな「人生」を過ごしているといえよう」とのこと(p203)。
それから宇宙の終焉の話。可能性としては「無限の膨張」か「ビッククランチ」かの二択なんだけど、「子ども宇宙」あるいはユニバースならぬ「マルチバース」というのがあって、なんだか気宇壮大というか奇想天外というか、「どうせ宇宙は無限なんだから何でも持って来い!」みたいな感じ。