『あの娘は石ころ』(双葉文庫)
音楽をテーマとした2〜3ページほどの短いエッセイ集。エッセイとエッセイの間に、著者が作詞した歌詞が挿入される。著者がローリング・ストーンズに対する思いを語る箇所がいい!
ビートルズというのはどちらかというと「いい子ちゃん」である。しかも作詞作曲の才能できらきらしている。ストーンズの書く曲ははっきりいってつまらない。そのかわりに人相は悪い。そのかわりといっては何だが、演奏は下手である。しかしこう言っちゃ何だが麻薬ばかり使用している。だからといってメンバーの仲は悪い。しかし、グルーピーを集めて3P4Pばっかりしている。そのかわり練習はしない。だけれどもチューニングは狂っている。そういう全てのマイナス・ポイントをよおく確認したうえでおれはストーンズのファンになったのである。
(p12)
他の本によると著者はエッセイスト・作家としてブレイクする以前に、無職から脱出するためにレコーディングを企てたことがある。だがレコードをプレスするのに必要な費用の40万を女に持ち逃げされたため実現しなかったそうだ。しかし著者は練習が死ぬほど嫌いだと公言しており、レコーディングに際しても集めたメンバーでぶっつけ本番の一発録りという方針で臨んだというから、仮にレコーディング費用を持ち逃げされなくても、うまくいくはずがないじゃないかと私なんかには思える。それでも著者に成算があったのは、著者の頭の中にはストーンズの成功例があったからなのだろう。
私は洋楽にはうといのだが(というより音楽全般にうとい)、セックス・ピストルズも相等なものだったらしい。それでも売れてしまうことがあるのが音楽業界なのだから、著者も一発賭けてみる気になったのだろう。