しいたげられたしいたけ

空気を読まない 他人に空気を読むことを要求しない

福岡伸一『世界は分けてもわからない』(講談社現代新書)

世界は分けてもわからない (講談社現代新書)

世界は分けてもわからない (講談社現代新書)

タイトルが示すとおり、要素還元主義のゆきづまりと複雑系の展望を示した本なのだろう。ただし細菌学はじめ要素還元主義がこれまで赫々たる成果を上げてきたことを強調しておかないのは、フェアじゃないように思う。
著者の専攻である分子生物学の話題をあちこち逍遥する、まあエッセイなんだと思う。難しい専門用語は登場するが、丁寧に解説してくれているので、門外漢でもぜんぜん理解できないということはない。
ただし後半1/3に至って本書の主人公wが初めて登場すると、がぜん緊張感が増す。「世界で最も有名な生化学者」エフレイム・ラッカーの主催する「世界で最も有名な(最も厳しい?)生化学研究室」にやってきた、若き「天才研究者」マーク・スペクターという人物である。
どこまで書いちゃっていいものだろう?ミステリじゃないからネタバレしてもいいのかも知れないが、ラストのあの意外感は、未読の読者のためにとっておきたい気がする。要するにラッカーとスペクターの共同研究は、悲劇的な破局を迎えるのである。
今日、要素還元主義がゆきづまっているのは明白である。しかしそれを補うために登場した複雑系という概念が成果を上げているかというと、どうもそうとも言えないような気がする。なんとなくデジャビュ。他のジャンルでも我々はこんな光景をしょっちゅう目にしているんじゃないかな。「社会主義がダメだったから新自由主義?新自由主義もコケたようだ。じゃあ次は何?」みたいな…