しいたげられたしいたけ

空気を読まない 他人に空気を読むことを要求しない

目取真俊『水滴』(文春文庫)

水滴 (文春文庫)

水滴 (文春文庫)

芥川賞受賞作の表題作を含む短編集。
「水滴」:沖縄に住む六十代の男の足がある日突然腫れ、大量の水が噴き出すようになった。それから夜な夜な、その水を飲みに、第二次大戦中の日本軍人の亡霊たちが訪れるようになる…
「風音」:戦前まで使用されていた沖縄の風葬場に、特攻隊員の頭蓋骨が置き忘れられている。本土から取材に訪れた定年間近のテレビ記者は、かつてその特攻隊員の同僚であった…
「オキナワン・ブック・レビュー」:架空の書評集という異色の形式のフィクション。宇宙人と交信できると自称するユタ(沖縄のシャーマン)や、皇太子の嫁を沖縄から出そうとする右翼活動家などの著書が次々に紹介されるうちにストーリーが進展する。
寓話なんだと思う。何か声高な主張があるわけではない。しかしストーリーを追ううちに、第二次大戦中の沖縄戦や、戦後の沖縄の基地問題に関する情報がインプットされる。その意味で、逆説的だが「わかりやすい寓話」と言えるかも知れない。いや、わからないところは、きっちりわからないんだけど。
逆に言えば、「寓話」でなければ、ややもすると先入観に阻まれて素直にインプットされにくい情報というものがあるのかも知れない。