重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る (幻冬舎新書)
- 作者: 大栗博司
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2012/05/29
- メディア: 新書
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標準模型では、素粒子を、物質のもととなるフェルミオンと、そのあいだの力を伝えるボゾンに大別します。
…中略…
また、素粒子の質量の起源とされるヒッグス粒子もボゾンの仲間に含めます。ヒッグス粒子は、素粒子の標準模型の中では唯一見つかっていない粒子ですが、LHCで発見されると期待されています。
(p198)
LHCというのはもちろん、例のニュースの発信源である欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突加速器のことである。
タイトルは一般相対性理論に基づくもので、本書は相対性理論と量子力学の発見から、現代物理学の最先端である両者の統一という大テーマの現状までを、丁寧に解説してくれている。数式を一つも使わないという方針は、弊ブログにときどき書いているようにあまり私の好みではないが、通読するとなんとなくわかったような気にさせてくれるのは、著者の説明が上手いからだろう。
まあ相対性理論にしろ量子力学にしろ、発見から半世紀以上が経過し検証が積み重ねられて、揺るがぬ確固たる大地として確立されているが、いずれも難解でちょっとやそっとじゃ歯の立つシロモノじゃないことは知っているんだけどね。
両者を統合する統一理論というのは未完成なのだが、そのカギになるのが超弦理論というモノで、この考えを推し進めるとマルチバース(多重宇宙)すなわち「宇宙は我々のいる一つだけではなく無数にある」という推論が出てくるんだそうだ。
我々のいる宇宙は物理的な諸定数があまりにも人間の存在に都合よくできていることに、驚きを感じる研究者は少なくないという。ほんの一例だが重力と電磁力の比がほんの少し違っていただけでも、原子核は安定して存在できないんだそうだ。
もしマルチバース仮説が正しければ、たまたま人間存在にちょうど都合のよい物理諸定数がそろっていたこの宇宙に、人間の意識が芽生えたということになる。
「そんな研究が何の役に立つのか?」なんて言わない。ひょっとしたらマルチバースを利用したワープだか亜空間飛行だか「どこでもドア」だかが、案外近い将来、実用化されるかも知れないのだ。だって我々が今使っているパソコンに不可欠の半導体技術は紛れもない量子力学の応用だし、何かとお騒がせの原子力発電も相対性理論を実用化したものに他ならない!
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