世紀が変わる頃の話です。
2つ目の会社を、あまり愉快でない経緯で退職した。自分でできることは何かないかと考えて、思い当たることはパソコン教室くらいしかなかった。
一昨日のはてなダイアリー『今のどこが面白かったかというと…』に少し書いたが、私はかつて暇さえあれば書店に入り浸る趣味があり、書店のうち何件かとは店と顧客という関係を超えた付き合いをさせてもらっていた。
そのうちの一件で、かつて名駅地下街の一角に店舗を構えていたところが、本を置く場所以外に10坪くらいの汎用のスペースも借りていて、そこで美術品の展示とか時としてビデオの上映会とか、いろんなイベントをやっていた。
時間帯限定で、そこを又貸ししてもらい、パソコン教室を開業した。
あとで法律に詳しい人に話を聞くと、賃借スペースを又借りすることは法的にいろいろ問題があるそうだが、私がここで仕事をしていた期間には目立ったトラブルはなかった。
当時の写真が残っていたので貼ってみる。
店頭から汎用スペースを覗いたところ。
汎用スペースにノートパソコンを並べたところ。ふつうパソコン教室ではデスクトップタイプを使うが、他のイベントにも使う汎用スペースなので、あえてノートパソコンを選択した。当初はリースの98マシンを使った。写真に写っているのはXPマシンです。
プリンタは書店のものを借りて、有線LANとプリンタサーバ経由で使っていた。
実はここの書店には、プリンタを借りるだけではなく、いろんなことでお世話になった。その最たるものが、スタート当初、パソコンをリースで借りてもらったことだ。私はずっと個人事業主でやってきて法人格を持っていない。リース会社から、まとまった台数の機材を借りるには法人格がいると言われた。書店は有限会社の法人格を持っていたので、そこの名義で借りてもらったのだ。
私の側で自己資金として必要だったのは50万円程度。これは起業資金としては常識外れの低額だと思う。大部分はMS-Officeの正規ライセンス料。他にLANのハブやケーブルとか、あと当時のパソコンはLANアダプタが内蔵されていなかったのでLANカードを別途購入する必要があった。明細は探せば残ってると思う。
勝算はあった。当時はいわゆるITバブルの時代。パソコン教室最大手(だよな?)のアビバがじゃんじゃんテレビCMを打ったりしていた。パソコンスキルというのは、就職のための資格のような今よりずっと大げさな位置づけだったのだ。当時でも私の感覚としては「そんな大げさなものじゃないだろう」というズレを感じていた。就職を控えた若い人じゃなく社会人とか主婦とか高齢者とかをターゲットに、書店をひやかしにくるお客さんが興味を持ってくれればいいなと思った。
また営業中は必ず店番をしている人がいるから、予約の受付を頼むことができる。時間割を書いたノートを預かってもらい、予約があればその時間帯に書き込んでもらうだけだから、パソコンの知識は一切いらない。
さらに書店なんだからテキストの注文もお願いすることができる。うちではFOM出版の「みどりの本」シリーズを使った。書影を貼ったのは最新バージョンだが、当時からパソコンアプリの入門書・自習書としてはポピュラーなものだったのだ。
滑り出しはまずまずだった。パソコン10台、一日一コマ、月〜金の週5回でスタートしたが、予約は満席になった。最初の一ヶ月の粗収入は40万円ほどになった。経費を差し引かなきゃならないし、ここまでしてもらった書店の取り分もそれなりだったから、私の手取りは10万円程度だったが、それでもかなり幸先のよい滑り出しだったと言えるんじゃないだろうか。
この項、パソコン教室を経営していました(その2)へ続きます。
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『冗弾の射手(その2)』
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