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人業〔ひとわざ〕劇団ひらき座の定期公演@千種文化小劇場を観てきた

知り合いが、ここと関わっているので。つか芝居はごくたまに観ることがある。
ひらき座は去年も観に行った。確か週に一回、練習をしているアマチュア劇団だ。「誰でも参加できる」を謳い文句にしているので、舞台に上る役者さんの数も多いし、顔ぶれも老若男女さまざまだ。劇団員が知り合いを誘っているからだろうか、私が観に行ったときはいつも客席は満席近い。
今回の会場である千種文化小劇場(ちくさ座)。

かんけ〜ないが「建築家は外装の失敗をツタで隠し、料理人は味付けの失敗をマヨネーズで隠し、政治家は内政の失敗を戦争で隠す」という警句を思い出した。あと「芸能プロダクションはアイドル育成の失敗をグループで隠す」。ここの外装が失敗してると言ってるわけではありません、念のため。
入口。

内部は、八角形の舞台を三方から客席が囲むという、かなりイレギュラーな構造だった。舞台が高くなっていなくて入口と同じ平面上にあるので、間違って舞台裏の出入り口から入ってしまったのじゃないかと、あせった。
あとでぐぐったらホームページがあった。私の観た回では、251席(+車イス2台)の客席は、ほぼ満席だった。
千種文化小劇場:施設のご案内
ポスター。演目は『ひらき座版 西遊記 完結編 〜冒険の心は花〜』。例の香港映画とは関係ありません。

「ひらき座版」と銘打ちながら、ストーリーは西遊記の原作を、かなり丁寧になぞったものだった。原作と言っても私は村上知行の抄訳しか読んでないけど。いや抄訳と言いながら分量は原作の2/3くらいあり、今はなき社会思想社現代教養文庫で3分冊、光文社文庫で2分冊のボリュームがあるが。あと中野美代子『西遊記―トリック・ワールド探訪 (岩波新書 新赤版 (666))』という深読み解説書も、読んだことがある。
しかし原作を知っていようが知っていまいが、西遊記の登場人物のキャラクターはよく知られているよね。生意気な若造の悟空。強い信念の持ち主だが気弱で頼りない玄奘三蔵。ちなみに日本では夏目雅子以来女性が演じるのが伝統になってしまったが、それ以前の手塚アニメ『悟空の大冒険』のとことん気の弱いオッサンというのも捨てがたい。つか原作では、男なのに妊娠させられるというとんでもないギャグシーンもあるので、男性でなければ納まりがつかない。大食漢で鉄板ギャグキャラの猪八戒。それから沙悟浄は、「ひらき座版」では哲学的で内省的だが傍観者的でもあるインテリ青年として描かれていた。これは中島敦の愛すべき連作短編小説『わが西遊記』を踏まえてるのだろうか? 『図書カード:悟浄出世』も『図書カード:悟浄歎異』も青空文庫に入っているので、気が向いたら読んでみてください。面白いですよ!
悟空の緊箍児〔きんこじ〕の冠に如意棒、玄奘の白馬、八戒の九歯の馬鍬、悟浄のしゃれこうべの首飾という、これも鉄板もはや誰にも変えられないコスチュームとも相まって(え? 『ドラゴンボール』? あーあー聞こえない)、キャラクターがガチガチに確立している、いわゆる「立っている」ことが、西遊記のストーリーが永遠の生命を獲得している理由の一つなのだと思う。
もちろん「ひらき座版」ならではの演出も、多数含まれている。オリジナル曲を多用したミュージカル仕立てというのも、その一つだし、「ブラック企業」「ヘイトスピーチ」など現代世相を受けたくすぐりも、盛り込まれていた。そうそう、悟空の神通力を表現する工夫も楽しい。舞台だから特撮は使えない。役者さんの入れ替わりとか、黒子さんの人形操作とか、わかっていても(わかっているから?)楽しめるのだ。鴻上尚史のエッセイを読んで、特撮に限らず、演劇人が舞台でダイレクトにはとても表現できないものを表現しようとする工夫と情熱は、すごいと思ったことがある。
それからラスト近くで雷音寺にて釈迦如来との面会を果たし、念願の経典を手にする直前に、経典を管理する仏弟子阿難・迦葉から袖の下を要求される(と誤解する)シーンは、原作にもあったけど、その後の展開はあんなだったっけ? ちょっと確認してみよう。印象的なラストは、原作に近いです。多くの人は忘れているだろうが、多くの人は言われれば思い出せると思う、アレです。私の好みとしては、カチーンと金属の落下する音を響かせる演出にして欲しかったかな。
帰途、吹上公園というところで何かイベントをやっていたので撮った。もらったチラシによると「パンマルシェ」というのだそうだ。

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『夜は超能力!(その22)』

西遊記―トリック・ワールド探訪 (岩波新書 新赤版 (666))

西遊記―トリック・ワールド探訪 (岩波新書 新赤版 (666))