名鉄電車で名古屋に移動したのだが、名古屋駅周辺では一宮七夕まつりの気配が全くなかったことに少し驚いた。探せばポスターの1枚くらいは見つかったかも知れないが。
近隣の町のお祭りには、どこも冷淡というのが一般的な現象なのだろう。
代わりにつか、『トランスフォーマー/最後の騎士王』のデジタルサイネージ公告が溢れていた。金かかってるだろうなアレ。
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市営地下鉄東山線で一駅の伏見駅に移動。袋町というのは、伏見、栄、丸の内、久屋大通という四つの地下鉄の駅を頂点とする四角形の、ちょうど真ん中あたりにある。地元の人間にしかピンと来ない地名だけど、これは名古屋のど真ん中ということを意味し、ちょっとすごいのだ。
ただしちょうど真ん中ということは、どっから歩いても遠いということでもある。伏見駅から歩くと10分くらいかかったかな?
これは伏見駅で降りてすぐのところにある「長者町繊維街」の看板。
ご覧の通りのビル街の区画の真ん中に…
袋町お聖天こと福生院〔ふくしょういん〕の山門があった。
門柱には「大聖歡喜天 眞言宗智山派 準別格本山 如意山 福生院」と刻まれていた。
前に来たのは何年前だったっけ? その時は気づかなかったけど、ここも毘沙門天を祀っているのだ。ここも、と書いたのは、山科聖天が毘沙門堂の塔頭だったから。7月26日付の拙記事 参照。つかそもそも山科聖天と比較したくてここに来たのは 前編 で述べた通り。逆に周りがビルばっかというのは、山の中にある山科聖天とは好対照。
一番上の看板だけ文字起こし。和田誠が描いたような毘沙門天のかわいいイラストが載っている看板だ。
お聖天様 根本霊場
なごや七福神 毘沙門天
名古屋二十一大師 第五番札所
東海36不動尊12番札所
袋町お聖天 福生院
つことは名古屋には、さらに七福神のうち他の六福神を祀ったところ、残りの二十大師、それに東海地区で35の不動尊があるということか? そのうちいくつかは、たまたま近所にあるとかですでに訪れているかもしれないが、多分行ったことないところばかりだぞ!
とは言うものの、現住所周辺には「知多四国八十八ヶ所霊場」というのがある。本家四国の八十八ヶ所霊場になぞらえて、地元の寺院をそれぞれ認定したところだ。
そのうち最初の五ヶ所ばかりは自転車や原付で訪れたが、飽きてしまってそれ以降はまだ行っていない。近場といえど、知らないところがいっぱいあるということだ。
* * *
境内。「撮影禁止」の張り紙や看板は、どこにもなかったはずなので。
ただし由緒書も見当たらなかった。ちょっと残念。
折悪しく工事中だった。
参拝の皆様へ
この度、御本堂屋根葺き替え工事を
行うこととなりました。
工事中、ご参拝の皆様方には何かと
ご迷惑をお掛けすることもあるかと
存じますが、何卒ご理解のほど
宜しくお願い申し上げます。
工事期間 平成29年5月9日より
平成29年8月31日まで
袋町お聖天 福生院 住職
無断での入堂は
かたくおことわり
申し上げます
山主
本尊(聖天さま)、
堂内諸仏は内佛堂へ
遷座いたしました
「内佛堂」は外から
おまいりいただけます
どうか内佛堂までご足
労の程お願い申し上げます
瓦葺き替え工事中
本堂内の聖天様他仏像は
内佛堂にておまつりしております
≪図≫
内佛堂なるところの入り口。
奥まで入ったけど遠慮して写真は載せない。一般民家の縁側のサッシの内側に、電飾の揺らぐローソクと逗子が覗けるようになっていた。仏像本体は見られなかった。
検索すると、歓喜天の仏像は秘仏となっているところが多いそうだ。「歓喜天 - Wikipedia」によると、象頭であったり、さらに男女二対が抱擁している像であったりするとのこと。インドやチベットでは、ズバリ交合像も作られているそうだ。だから霊力最強と称されたり、秘仏とされやすいのだろうか?
個人的な意見としては、秘仏というのは、やはりつまらないと感じる。京都や奈良の仏像は、高名なものが惜しげもなく公開されている。奈良の大仏が秘仏か? 三十三間堂の千体仏が秘仏か? ってことだ。それも「えっ、いいの?」と思うほど近くから拝観できるところが多い。
それが地方に行けば行くほど秘仏が増える。西国第三十二番霊場である滋賀県の観音正寺の本尊千手観音像は、秘仏のまま平成に入って早々に落雷で本堂ごと全焼してしまった。そんなことがあると、何のための仏像なのか、何のための秘仏なのか、よくわからなくなる。
代わりにってことではないだろうが、境内は様々な仏像、石仏で賑やかだった。十一面観音、石塔…
上の写真から少し左側を撮ったところ。七福神、地蔵尊、毘沙門天…いらんことを言うと、七福神と毘沙門天は被ってる。
そして六角宝塔のたもとには、こんな看板が。
六角宝塔
上層には十二支総まもり本尊の薬師如来が
下層には皆様方の生まれ年のまもり本尊が
方位順におまつりしてあります。
宝塔を右まわりして、家内一同の身体健全
除災招福を祈念ください。
これらの仏像は、格子の隙間から覗くことはできた。
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門を出ると、名古屋テレビ塔が見えた。
考えてみれば、私は名古屋に近い田舎に住んでいるというだけであって、名古屋の市街地のことは、あんまり知らないのであった。
NHK「ブラタモリ」名古屋編によると、家康の都市計画により名古屋は区画の四方に店舗などの正面が向いているとのこと。モデルにした京都では、町屋の正面は南北の通りに向いており、東西の通りには側面しか向いていないそうだ。へぇ、そうなの? 知らんかった。
これにより、名古屋では通りに面する面積が広くなる代償として、区画の中央に空間が生じたとのこと。言葉で説明するとわかりにくいな。カタカナの「ロ」の字の、四角の中のスペースってことね。
そこが聖地として祀られたり、集会場として利用されたりしていたそうだ。福生院は聖地の一例だろうけど、現代においては集会場の代わりに立体駐車場が建ったりしているとのことだった。
ホンマかいなと思って観察していると、立体駐車場は確かにちょいちょい見かけた。それ以上に、平面の駐車場も多かった。
地下鉄伏見駅に戻る途中、駐車場の、こんな壁画(?)を見かけた。なんだこれ?