よく他の方のブログからネタをいただいています。今回は ゆあさよ。 (id:yuasayo1013)さんの、こちらのエントリーに乗っからせてもらいます。
「ロックンローラーはいくつになってもロックンローラー、ヒッピーは年をとってもヒッピー、オタクは氏ぬまでオタク」と言います(言うかな?)。ただし R&Rer がいつまでも R&Rer であるためには、あるいはヲタが氏の間際までヲタであるためには、それぞれなにがしかの努力が必要であるように思います。
ゆあさよ。さんのブログは、ブログタイトルの通り、ロックな生きざまを貫くために奮闘する日常を描くものですが、多くの場合、子煩悩ネタや愛妻ネタでオチるのが予定調和です。今回のエントリーは、天使のような悪魔というか、悪魔のような天使の時期にある御令息を、なだめすかして保育園に送って行かれるエピソードでしたが、 ゆあさよ。さんのブログのもう一つの特徴として、難解な漢熟語、それも四字熟語を好んで用いられるという特徴があります。ロックな生き方を描くのに効果的と考えられてのキャラ立てでしょうが、とりわけ今回の、「没分暁漢」であるとか「悽愴流涕」とかの難解至極な四字熟語の連発には、子育てのご苦労が偲ばれるという別の効果が生じているようにも感じられました。
「他人の苦労は笑える」という血も涙もないことを言ってるような気がするけど、まあいいか。
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ここで、ふと「お菓子」って言葉に、古語だとか雅語だとか、婉曲な言い回しだとか、あったっけ? という疑問が浮かびました。
その旨をブックマークコメントに書き、仕事が一段落した気楽さで、ツイッターに連続投稿してしまいました。
前回のエントリーに書いた通り、追い込みで1ヶ月近く在宅のパソコン仕事をやってました。集中してやればもっと早く仕上がったんでしょうが、集中力ないもんだから、ちょっと働いてはネットに逃避し、ちょっと働いてはまた逃避し、という繰返しでした。
今年はツイッターが新たな監視先に加わってしまいました。アカウントは以前から持っていたのですが、本格的には使っていませんでした(あかんやん)。
しいたけ@しいたげられた
@wtnb4950
「菓子」自体が「果物」の古語だというのは知ってた。しかし古来これほど人々に愛され、また恥じらいの念を起こさせてきた事物も少ないと思うのだが、婉曲な呼び名がないなんてことはないだろう…????
11:02 - 2017年8月22日
https://twitter.com/wtnb4950/status/899814101697744896
「恥じらいの念」と言うのは、要するに「おっさんがチョコ食って何が悪い!(`;ω;´)」「じじいがアイス好きでどこがおかしい!(`;ω;´)」ってことです。
しいたけ@しいたげられた
@wtnb4950
「酒」だったら即座に「百薬の長」「般若湯」「キチガイ水」など1ダースほども思いつくのに。検索したら、げげっ、「740くらいある」というサイトがヒットした!
http://negotoya.sakura.ne.jp/imyou.htm
11:04 - 2017年8月22日
https://twitter.com/wtnb4950/status/899814614866608129
「即座に1ダース」というのはさすがに盛りすぎで、あとで考えたら「神の雫」(それはマンガだ)とか「(上善)如水」(それは銘柄だ)とかが混じっていました。
* * *
前々回の 8月20日付の記事 でも使いましたが、ツイッターで他人にメンション飛ばすというはた迷惑な技も覚えてしまいました。褒められたことではありません。
しいたけ@しいたげられた
@wtnb4950
船橋海神@nekohanahime 先生にムチャ振りしたら教えてくれるかな?(迷惑
11:06 - 2017年8月22日
https://twitter.com/wtnb4950/status/899815050629611520
dk4130523(id:cj3029412)さんからは、即座に応答いただきました。ありがとうございました。
(宿題としてお預かりしましたにゃーん😺)(きょうみしんしんにゃー😺ぴょんぴょん😺)
— nekohanahime (@nekohanahime) 2017年8月22日
で、さっそく教えてもらったのが、こちらのサイトです。
ううむ、当然ながら、人間の興味が甘味に向かわなかったわけがないのですね。
ふむふむにゃー😺(文七元結 「もっとい」)音便には古語のひみつがつまってるにゃよー😺まっかうりさん😺😺😺
— nekohanahime (@nekohanahime) 2017年8月22日
落語の他にも、例えば茶道では菓子が重要な要素であり、役割に応じて「主菓子」「干菓子」などと呼び方が変わるというのを見つけました。ただし私の茶道に関する経験や知識はゼロなので、これ以上論じることはできません。
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ちっとは自分でも調べてみようと思いました。アテはあったのです。大蔵出版『新国訳大蔵経 律部〈7〉四分律比丘戒本・四分比丘尼戒本』という本を持っています。なんでこの本を持っているかに関しては、一年ほど前にエントリー にしました。これをめくればあるんじゃないかと予想しました。
あっさり見つかりました。探せば他にもあるかも知れません。
『四分比丘尼戒本』の「百七十八波逸提〔はいつだい〕法」第二十三です。波逸提の罪というのは、同書P106の注釈によると、これらの罪を犯すと地獄に落ちるが、他の比丘や比丘尼の前で懺悔をすれば許されるというものだそうです。
若し比丘尼、檀越〔だんおつ〕の家にいたり、慇懃〔おんごん〕に請〔しょう〕じて餅〔びょう〕・麨〔しょう〕の食を与えられんに、比丘尼、須〔もち〕いんと欲せば、二、三鉢を応に受くべし。持ちて寺内に至り、餘比丘尼に分与して食するに、若し比丘尼、病なくして、三鉢を過ぎて受け、持ちて寺中に至り、餘比丘尼に分与せずして食せば、波逸提なり。
『新国訳大蔵経 律部〈7〉四分律比丘戒本・四分比丘尼戒本』P183、訳注あるも略
「麨」というのは、検索して調べると「麦こがし」のことだそうです。
雑に言い直すと、「もし尼さんが檀家から餅や麨をあげると言われたら、二、三鉢までならもらっていいよ。でも三鉢以上もらって寺に持ち帰り、病気でもないのに他の尼さんに分けないで食べたら懺悔の刑だよ」 というところでしょうか。
なお、『四分比丘尼戒』ではなく『四分律比丘戒』の「九十波逸提法」第三十四(P33)にも、ほぼ同内容の戒がありますが、なぜかそちらは「餅・麨・飯」となっていて、お菓子限定というニュアンスではなくなっています。
仏典にこういう文章があるとなると、それを語源とした「餅麨〔びょうしょう〕」という言葉があるのではないかと思って検索したところ、それらしき語はヒットしませんでした。原典のない故事成語はないが、原典があるからと言って言葉があるとは限らないのですね。
代わりにヒットしたのが「麨蜜〔しょうみつ〕」という語で、これは浄土教の根本経典の一つである『観無量寿経』の、プロローグの部分に出てくる言葉です。悲劇的ですが、同時に仏典とは思えぬような色っぺーエピソードです。色っぽくても壇蜜とは無関係です。これはこれで以前から何か論じたいと思っているのですが、論旨が大幅にズレるので別の機会にします。
* * *
『四分比丘尼戒本』「百七十八波逸提法」の第二十三に続く第二十四は、次のようなものです。
若し比丘尼、非時に食せば、波逸提なり。
『新国訳大蔵経 律部〈7〉四分律比丘戒本・四分比丘尼戒本』P183、訳注あるも略
『四分律比丘戒』の「九十波逸提法」では、第三十七にほぼ同じ内容の項目があります(P35)。
原始仏教の僧団で、午後の食事を禁止していたことは、比較的よく知られていると思います。
僧坊などで夕食のことを「薬石」というのは、修行者が空腹を紛らわすために、温めた石を腹に抱いた故事に基づくと言います(「懐石」もそう)。また、「お斎〔おとき〕」は「お時」すなわち「食べていい時間帯の食事」が語源だったと、どこかで見聞きしたうろ覚えの記憶があるのですが、検索では確認できませんでした。
そゆえば「食事」の異名も多いな~。
* * *
これでようやく気づきました。「時間に基づく軽食の異名」ということで、「おやつ」というのがあるじゃないかと! これぞまさしく「お菓子」を広く言い換えたものと言えるかも知れません。
しかし「おやつ」という語自体が、あまりに普通に使われているため、「お菓子」を「おやつ」と言い換えても、古雅な印象も婉曲な感覚も感じられません。
これが例えば僧坊でお薬石をいただいて、レシートに「google:麦般若」と書いてあったら、それが何の代金だったか思い出せない人は、多分いないでしょう。そういう広く通じる「お菓子」の言いかえが見当たらないことが、興味深く感じられるのです。
この問題に関しては、気楽にもう少し考え続けてみたいと思っています。