言葉の収集癖がある。モノを集めるのと違って、金もかからないし場所も取らないので、貧乏人にはもってこいの趣味だと思っている。
こんな人気増田があった。
タイトルを見たとき、古い戯言 google:大師は弘法に奪われ、太閤は秀吉に奪わる の類かと思ったら違った。よく考えると「代名詞」や「敬称」の用法は、これでいいのか悪いのかよくわからないが、気にしないことにする。
「大師は弘法に奪われ…」で検索すると、類例がけっこう集まりそうだと思った。また検索しても出てこないが思いついたものもある。そんなでちょっと集めてみたくなった。
大師は弘法に奪われ(弘法=空海)
ウィキペによると 大師号の起源は中国で、日本では朝廷より下賜される。教科書では「伝教大師」(=最澄)とセットで出てくるので、それほど空海の独占物という気もしない。
やはりウィキペによると、日本で大師号を受けているのは25人。大きな宗派の祖師や中興の祖と言われている人は、だいたい大師号を持っているようだ。
浄土宗の祖、法然が、500回忌以降50年ごとに新しい大師号を追贈されているのが目を引く。最新は2011年の800回忌に今上天皇より受けた「法爾大師」で、現在合計8つになっている。おそらく徳川将軍家の宗旨が浄土宗であったことから特別扱いされ、それが明治維新後も慣例化し続いたのだろう。
太閤は秀吉に奪われ
太閤とは引退した関白のことだから、在職中に亡くなった関白以外は、みな太閤のはずだ。ただし ウィキペには 藤原道長が太閤と呼ばれていたという事例くらいしか出ていない。太閤でぐぐると本当に秀吉しか出てこないから、最初に太閤と呼ばれたのは誰かを調べたければ、論文検索するしかなさそうだ。うちのブログでは、いつもそこまではしない。
黄門は光圀に奪われ
中納言の唐名が「黄門侍郎」であったことが語源だそうだから、中納言の数だけ黄門がいたはずである。
いらんことだが、東大本郷キャンパスの有名な「赤門」は元は加賀藩邸にあったもので、赤門を作ることは大納言邸にのみ許されたものだと聞きかじったことがある。ただし検索しても、その通りには出てこない。なんとなく大納言は赤門だから中納言は黄門なのか、などと一人合点していた時期があった。本当に黄色く塗られた門があったわけではない。さらに戯言を重ねるなら、清少納言と言うから少納言の邸宅は門を青く塗ることにしたら面白かろう。信号じゃないんだけど。
追記:
wikipedia:黄門侍郎 には、“秦や漢では、禁中の門(禁門)が黄色に塗られていて≪中略≫皇帝に近侍するこの官職(郎官)は「黄門侍郎」と称されるようになった” と書いてありました。失礼しました。ただし中納言邸の門が黄色く塗られていたわけではないようです。
三蔵は玄奘に奪われ
仏教で経・律・論に通じた高僧を指す。他の例としては、有名な経訳僧である鳩摩羅什もこの敬称を受けており、阿弥陀経の冒頭には「姚秦三蔵法師鳩摩羅什奉詔訳」という句が置かれている。
祖師は日蓮に奪われ
「大師は弘法に奪われ」で検索するとセットで出てくることが多い。知らないな~。私は仏教オタクの傾向があるが、日蓮宗はちょっと独特で、日蓮宗独自の言い回しが多いという印象を持っている。例えばもう10年近くも前になるが、中村圭志『信じない人のための「法華経」講座』という本の中に「日蓮菩薩」という言葉が出てきて「言わない言わない」と脳内突っ込みを入れたことがあった。宗派内ではそれが当然の言い方なのだろう。
義士は赤穂に奪われ
…とはあんまり言わないか。濃尾平野南部出身者としては、宝暦治水の平田靭負ら薩摩義士を決して忘れない。浅田次郎に『壬生義士伝』(上・下)というのもあった。なお弊ブログでたびたび言及している冨谷至『中国義士伝 (中公新書)』は、中国史好きには必読の一冊です。前漢の蘇武(「節を持す」の語源となった人)、唐の顔真卿(安禄山に対峙した名臣)、南宋の文天祥(幕末の志士が愛唱したという「正気の歌」の作者)が取り上げられています。
総統はヒトラーに奪われ
だんだんネタと化します。思ったほど集まらなかったというのが本音です。中華民国の元首も「総統」なんですけどね。あとデスラー総統というのがいるけど、モデルは明らかにヒトラーです。
尊師は麻原に奪われ
上掲増田の b:id:shijuushi さんブコメによる(呼ぶなよ)。確かにそうだ。
検索すると、それ以外にも変なものが出てくるが、あえて無視する。
代名詞と化してる敬称が好き。
- [メモ]
このカテゴリのはずなのに、まともな意味で使われなくなった「尊師」……
2018/04/07 22:53
店長は店長に奪われ
上掲増田のブコメで、この同工がやけに目立った。ただし「はてな村」古参住人にしか通じない。
これをオチにするしかない、これをオチにすれば、なんとかなるだろうという気がしたので。
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