先月の記事はこちら。
ネットの時間が流れるのは早い。政治関連の話題では、今はとある国会議員の月刊誌記事が炎上しているが、先週末頃に話題になっていたのは、枝野幸男氏の2時間43分にも及ぶ国会演説「安倍内閣不信任決議案 趣旨弁明」だった。
もとより私も枝野氏の演説の内容に、すべて同意するわけではない。一例だが “不信任理由2「カジノ法案の強行」(25:24〜41:23)” でカジノを批判するのに持統天皇によるスゴロク禁止令を持ち出したあたりは、「おいおい (^▽^;」と思ってしまった。いらんことだが個人的事情として古代天皇家に興味を抱き、ちょうど橋本治『日本の女帝の物語 あまりにも現代的な古代の六人の女帝達』(集英社新書) なんて本を読んでいたりしたのだ。ええい、すぐに余計なことを言いたがる悪癖がまた出た。
しかし全体としては、近年の安倍内閣による政治の、よい批判的まとめになっていたと考える。時代の俯瞰図として記録に値するものだと思う。
枝野氏の国会演説に対しては、いろんな人がいろんな意見を言っているので、ヘソ曲がりな私は例によって他人があまり言ってなさそうなことを言ってみたいと思う。
“不信任理由3「アベノミクスの限界の露呈」(41:24〜1:11:35)” に、次のような部分があった。枝野氏はまず “アベノミクスをいわば「強い者・豊かな者をより強く、豊かにする政策である」” (上掲 note より。太字は原文のまま)と総括し、次のような事例を挙げた。
残念ながら例えば、今回の長時間労働を是正する働かせ方改悪法案の数少ない改善部分である長時間労働の規制も低賃金、重労働、長時間労働であるトラックドライバーなどの皆さんについては先送りをされてしまいました。
(上掲 note より。太字は原文のまま)
こんな事例もあった。
≪略≫米作農家の経営安定に大きな貢献をしてきた米の直接支払制度について安倍政権は平成30年度産米から廃止をしました。我々が推進をした農業の戸別所得補償制度はそれに先立って廃止をされています。
一次産業の中には天候によって、大きな利益をあげる年もありますが、逆にそのことによって翌年の再生産も不可能なくらい所得を得られない時もあります。どんな年でも最低限、翌年の再生産が可能な安定的な一次産業の経営を担っていただく。そのためにいわゆる所得補償制度をとることは先進国の農業政策においては今や常識となっている。私たちは、これはまさに農業を守る、食の安全を守る、緑を守る、と同時に特に過疎地域などにおける経済を回していく最低限の前提条件として必要なことだと思っていますが、安倍政権はこれに逆行する政策を今までとっているわけであります。
(上掲 note より。太字は原文のまま)
上の引用の直後にも、こんな箇所があった。
≪略≫卸売市場法改正を始め、農政改革法案を成立させましたが、農業を他産業と同一視し、目先の経済効率を過度に追及するのみで多面的機能を評価し維持するための方向性に逆行をしています。いわゆる土地改良予算は一方で大幅に伸びており、安倍農政は小規模農家、つまり地域社会を経済の面でも支えている人たちを切り捨てる一方で従来型の農業土木を推進している。誰のための農政なのかと申し上げたいし、まさに土地改良などの農業土木はいつまで継続するかわからないわけであります。≪略≫
安倍政権はこうした暮らしを社会を下から支えて押し上げるという、いま我が国がとらなければならない経済政策の方向とは逆行し、強い者をより強くする、豊かな者をより豊かにする。そうすれば、世の中全体がそこに引っ張られて良くなる、あるいは豊かさがしたたり落ちるという、全く時代遅れとなった政策に強弁をし、社会の分断と貧困を招き、そして、思った通りの案的な経済成長をもたらすことができないという結果をもたらしている。
(上掲 note より。太字は原文のまま)
私は枝野氏の見解におおむね同意するところであるが、枝野氏と意見を同じくしない人も多数いることであろう。
自らに課す課題として注目しておきたいと思ったのは、以下のようなことである。国会が開催されるたびに数多くの法案が成立し法律となる。それらのうち、今国会で言えば高度プロフェッショナル法制やカジノ法は、大いに報道され多くの人の耳目に晒されたのであるが、「働かせ方改悪法案」(働き方改革関連法案)の長時間労働規制からトラックドライバーなどが除外されていること、「米の直接支払制度」や「農業の戸別所得補償制度」が廃止されたこと、「卸売市場法改正」など「農政改革法案」が成立したことなどは、報道されただろうか? 大手メディアがすべてを報道することは、キャパ的に不可能だと思う。我々がトラックドライバー、あるいは農家といった当事者であれば、それぞれの独自ルートから「今国会ではこんな法案が成立するよ」というニュースが得られていたかも知れないが。
7月22日の拙記事 であるとか、近年の日本政治が国民を狭い階層に細分化し、それぞれを締め上げているのではないかという疑念を、最近の弊ブログでは何度か書いている。
「自分はトラックドライバーじゃないから関係ない」
「自分は農家じゃないから関係ない」
「自分は高プロになるほど給料をもらってないから関係ない」
「自分はギャンブルをやらないから関係ない」
といった感情は、為政者の思う壺ではないか、このような感情を、立法者は積極的に利用しているのではないか、という疑念である。
そのエビデンスは、当然ながら国会を精密にウォッチしていれば得られるのだろうなということが、なんとなくわかった気がした。問題はそれをどう実行するかだ。曲がりなりにも仕事のある身では、平日昼間の国会中継を全部ウォッチすることはできない。ウォッチャーの力を借りるとか、あるいは国会の議事録などの情報はwebにアップされているから、その賢い利用法を習得するとか、方法はいかようでもありそうなのだが…
今のところ雲をつかむような話ではある。
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とまれ、先週末の「戦争はイヤだ!」集会の写真を。先週末は他にもいろいろあって、なんとなく気疲れしたからブログに上げるのが遅くなった。
逆光のため顔消しがいらないみたいなので便利。
参加人数は最大で15~6人だったかな。延べ人数だと、もうちょっと行ってるかも知れない。
横断幕、準備中。
今回は自作プラカードを用意しなかったので、適当に借りた。
この集会は参加自由と言うものの、メインは9条改憲反対の署名集めである。顔消しすみません。
親子連れが署名に協力してくれた。
一度にお二人の方が。お連れではなく別々の方である。
他にも署名に応じてくださる方があり、この日はけっこう集まり具合が好調だったように思った。
ときに昨日あたりから、枝野氏の国会演説はブックレットになるとの情報がネット上を駆けまわった。なに、解説は高プロ反対の論陣を張った上西充子氏? こりゃ予約するっきゃない、ということで予約した。
今回の締めとしてブログパーツも貼る。
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