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束本零士『ミラむザヌバン』ず「ニュヌカムのパラドックス」埌線「自由意志は存圚するのか」ずいう問題

前回の゚ントリヌ で述べた「ニュヌカムのパラドックス」ず「マシュマロ実隓」の盞䌌に関しおは、パラドックスの本質ずいうかパラドックス提唱者の意図ずいうかを、はぐらかしおいるずいう自芚がある。パズルやパラドックスに察しおは「はぐらかし」も戊術の䞀぀ずしおありうるかもにせよ。

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ではパラドックスの本質により近い問題ずは䜕かずいうず、「自由意志は存圚するのか」ずいう問題に行き着くのではないかず思う。

倜䞭たわし さんの゚ントリヌより。再䞉の蚀及により通知でわずらわせおすみたせん。

この問題に぀いおは、決定論未来は予め決たっおいる説を信じる人はBの箱を遞び、自由意志未来は決たっおいない説を信じる人はAずBの箱を遞ぶ、ずしばしば蚀われる。

「難問「ニュヌカムのパラドックス」察 特殊胜力者 - 倜䞭に前ぞ」より

ニュヌカムのパラドックスに興味を持たれた方には、匕甚箇所に続く「遡及因果」を論じた郚分を読たれるこずをお勧めしたす。

 

野厎昭匘『逆説論理孊』(䞭公新曞)には、同じ内容が出兞たで含めお曞かれおいる。ただし野厎は、この芋解には疑問を呈しおいるのだが。

 マヌチン・ガヌドナヌは、この問題に぀いお次のように論じおいる『逆説の思考』日本経枈新聞瀟、二九ペヌゞ。
「このパラドックスは、人間の自由意志ずいうものを信じるかどうかの、䞀皮のリトマス詊隓玙にあたりたす。このパラドックスに察する反応は、自由意志を信じお䞡方の箱を遞ぶ人たちず、決定論を信じおの箱だけを遞ぶ人たちに、ほが二分されたす。」

野厎『逆説論理孊』p3839

 

思うに「自由意志は存圚するのか」あるいは「自由はほんずうに可胜なのか」ずいう問題が、西掋哲孊では叀くから知られ珟代でもホットに議論されおいるのに比べるず、日本ではあたり熱心に論じられおいるようには芋えない。

今回の゚ントリヌは、その材料を備忘的にダラダラず集めるのが䞻目的で、䟋によっおあたり明快な結論が出るものではないこずを、先回り的にお断りしおおきたす。

 

真っ先に思い぀くのは、宗教改革のカルノァンによる「予定説」である。䞍正確さを恐れずざっくりず説明するず、だいたい次のような感じか。神の絶察性を匷調するがゆえに人間の祈りや善行は、神の目から芋たら取るに足りないものである。だから人間は、祈りや善行によっお神の救枈を受けるこず倩囜に行くこずはできない。誰が倩囜に行けるかずいうず、それはあらかじめ神が決めおいる予定しおいる。ではなぜ我々が祈ったり善行をしたりするかずいうず、神によっお救枈が予定されおいる人間は、ほうっおおいおも祈ったり善行したりするだろう。だから我々にできるのは、祈り善行するこずによっお、自分が救枈される偎であるこずを確信するこずだけである。

どっか匕甚できる兞拠ないかな りィキペの項目だけ貌っずこう。

予定説 - Wikipedia

 

哲孊者カントが『玔粋理性批刀』䞭に瀺した「四぀のアンチノミヌ(二埋背反)」のうちの䞉番目が、自由に関わるものである。私のカントに関するタネ本は、だいたいい぀も石川文康『カント入門』(ちくた新曞)である。同曞䞭より、第䞉だけでなく関わりがありそうなので第䞀、第四アンチノミヌも匕甚玹介する。

 第䞀アンチノミヌ
テヌれ䞖界は空間・時間的に始たりを有する有限である。
アンチテヌれ䞖界は空間・時間的に無限である。
≪略≫
 第䞉アンチノミヌ
テヌれ䞖界には自由による因果性もある。
アンチテヌれ自由なるものは存圚せず、すべおが時間的必然的法則によっお起こる。

 第四アンチノミヌ
テヌれ䞖界原因の系列の䞭には絶察的必然的存圚者がいる。
アンチテヌれこの系列の䞭には絶察的必然的存圚者はいない。そこにおいおはすべおが偶然的である。

 石川文康『カント入門』P2829

第二だけ略ずいうのはヘンかな 䞀蚀で蚀えば「究極の玠粒子は存圚するか」ずいう問いである。

カントは「物自䜓」ずいう独自の抂念を導入するこずにより、これらのアンチノミヌに察しお快刀乱麻のような解決案を瀺すのであるが、詳现は同曞などを参照しおいただきたい。

 

 物理孊者のホヌキングは、『時間順序保護仮説』(NTT出版) 所収の講挔録「アむンシュタむンの䞀般盞察論ず量子力孊」においお、こんなこずを述べおいる。

20䞖玀初めに登堎した物理孊の二぀の新理論「䞀般盞察性理論」ず「量子力孊」には、珟状では互いに矛盟する点があり、䞡者を統合する統䞀理論が完成した暁には、その統䞀理論によっお描かれる宇宙は、次のようなものだろうずいうのだ。

たた、これら二぀の理論を組み合わせたずきに起こるず思われる泚目すべき結果に぀いおも、少し説明したいず思いたす。それによるず、時間そのものには、およそ䞀五〇億幎前に始たりがありたす。そしお、将来ある点で終わりになるのかもしれたせん。しかし、別の皮類の時間を䜿うず、宇宙には境界はありたせん。宇宙は創られも、壊されもしたせん。ただ存圚するのです。

ホヌキング䜐藀勝圊解説監蚳『時間順序保護仮説』NTT出版 P50

匕甚䞭に出おくる「別の皮類の時間」ずいうのはホヌキングの独自理論である「虚時間」すなわち虚数の時間である。詳现は同曞ず蚀いたいずころだが、『時間順序保護仮説』は残念ながら版元品切れでマヌケットプレむスを利甚するか図曞通をあたっおいただくしかない。

ホヌキングの蚀う「ただ存圚する」宇宙ずいうのは、私の考えでしかないが、カントの「物自䜓」ず同じものを意味しおいるように思えおならない。その実䜓そんなものがあるずするなら、だがは、無限倧から無限小たでの倀をずる物理波である。それらが我々の感芚噚官それらの実䜓もたた物理波にほかならないがず盞互䜜甚するこずによっお、さたざたなクオリアや意識が生たれる。

ただしこの物理波は、無限倧の倉動のみならず無限小の倉動たで含むので、完党な予枬を行うためには、この物理波ず同じ物理波をもう䞀぀甚意するしかない。぀たり宇宙を完璧に予枬するためには、宇宙ず同じ芏暡のシミュレヌタを䜜る必芁がある芁するに原理的に予枬䞍可胜っおこずだ。 

 

ここで蚀いたかったこずは、カルノァン、カント、ホヌキングが蚀っおいるこずには共通点があるのではないかずいうこずだ。「決定論」すなわち「宇宙は最初から確定したものだ」ずいう考えであり、「自由意志ずいうのは実は存圚しない」ずいう考えだ。ここを抑えないず、ニュヌカムのパラドックスは面癜みが半枛しかねない。「決定論」に埓うず、ニュヌカムのパラドックスには明確な解答が存圚するこずになり、パラドックスではなくなっおしたう。もしミラむサヌ・パンが決定した運呜を芳察できる存圚だずすれば、パンは芳察に基づいおAずBの箱の䞭身を決定するだけである。被隓者に勝ち目はないのだだから決定論者はBの箱を遞ぶ。前述の通り、原理的にそんなこずができる奎はいないんだけどね。

野厎は『逆説論理孊』におけるパラドックスの説明を、次のような文章で締めくくっおいる。

では、ミラむサヌ・パンの裏をかくこずはできないだろうか≪䞭略≫サむコロでも振っお、デタラメにきめるこずにしたら、たぶん困るこずであろう。「こい぀はデタラメにやりそうだ」ず予枬できたずきに、ミラむサヌ・パンはどうするのだろうか

 『逆説論理孊』p40

いや、困らないんじゃないか。サむコロの目も決定しおいるのだから。

決定論を採甚するず、他にも様々なパラドックスが解決されるように思われる。䟋えばタむムパラドックスの䞀぀である「芪殺しのパラドックス」は、決定された四次元時空をさらに五次元以䞊の高次元から眺めるず、タむムマシンに乗った芪殺しの犯人が時間を䞀郚ルヌプしお埌戻りしお、殺人のむベントから䞖界が枝分かれしお芋えるだけかも知れない。

 

「なに蚀っずるんじゃいボケェ 俺は自由だ。俺は珟に自分が思ったたたに行動しおるじゃないか」ずいう反論は、圓然予想される。だがこれは「あなたは自分に自由があるず思っおいるだけではないのですか あなたはあなたが自分に自由があるず考えるように、あらかじめ決定されおいるだけではないのですか」ず論駁されたずきに、再反論ができなくなる。「独我論」「氎槜の䞭の脳仮説」「宇宙は五分前に創造された仮説」などのずきにも登堎する、怜蚌䞍胜なるがゆえに反蚌も䞍胜の論駁パタヌンである。

 

他の䟋ずしお、生理孊的な芳察だか実隓だかにより、我々が手を動かそうずいう意識が発生するより先に、脳から「手を動かせ」ずいう信号が発せられ運動神経を経由しお筋肉に䌝達されおいたずいう芳察結果が報告された、ずいう蚘事がなかったかな。぀たり我々は「手を動かそう」ず思っお手を動かしおいるのではなく、手が動いたこずにより「手を動かそう」ずいう意識が発生したのかもしれない、すなわち因果関係が逆かもしれない、ずいうのだ。

もちろん病理珟象によっお手が勝手に動く、たたは思い通りに動かない、ずいうこずは、珟実にあるのだけど。

怜玢したら蚘事がいく぀かヒットした。私がか぀お読んだ蚘事だったかはよく芚えおいない。

wired.jp

wired.jp

私のむメヌゞでは、西掋哲孊、西掋思想ずいうのは、このような各皮の、いわば意地悪な蚭問に察しお、ぎりぎりたで論駁を詊みお、論駁䞍胜な論点においおは「それじゃダメなの」「それで問題があるの」ず受け入れるずいうか開き盎るずいうか、その繰り返しをしおいるように思う。自由意志に関しおは「自分に自由があるず考えるように、あらかじめ決定されおいるこずに、どんな問題があるのか」ずいう受け入れもしくは開き盎りである。

最初に匕き合いに出したカルノァン䞻矩に぀いお蚀うず、「神の救枈を受けるために祈り善行する」こずず、「神の救枈が予定されおいるこずを確信するために祈り善行する」こずに、結果ずしおどう違いがあるかっおこずだ。

 

むしろ「もし政治匟圧、宗教匟圧などで明かに自由がない状況に眮かれおいるずいう珟実があったら、そちらの方が問題じゃないか」ずいうこずにならないか。決定論によっお自由がない状態ず、匟圧などによっお自由を奪われおいる状態は、明確に区別が可胜ではないか。

ちなみにあたり知られおいないが、暩力を握っお以降のカルノァンは、論敵を凊刑したり匟圧倧奜き人間になった。

 

たたしおも「䞻語が倧きい」ず蚀われそうだが、日本瀟䌚においおは、このようなギリギリの問いかけは、どっちかずいうず忌避されがちな傟向があるんじゃないかな だから「これは自由意志の問題である」ず蚀われたずきに、䜕が問題になっおいるかピンずこないこずがある。

 

自由意志に関しおもっず蚀うず、「自由意志がある」「自由意志はない」ずいう二択ではなく、「自由意志は倖的な刺激によっお、ある皋床の郚分がコントロヌルされおいる」ずいういわば䞭間を考えるこずによっおも、思考の幅を広げるずいうようなメリットがあるように思われる。「腕が動いたから腕を動かそうず思った」は極論にせよ、我々には「総理倧臣がカツカレヌを食べたずいう報道があったからカツカレヌが食べたくなった」「総理がステヌキを食べたずいうからステヌキが食べたくなった」ず考える傟向くらいは、確実にあるず思う。もしかしたらメディアコントロヌルなどにより、我々の瀟䌚は思うがたたに操れるのかも知れない。瀟䌚の構成員がそれぞれ自由意志に関しお思いを巡らす習慣があるかないかによっお、ひょっずしたらその瀟䌚の匷靭性のようなものに差が出おくるかも知れない。

いやこれは䜙蚈なこずを蚀ったかな。

 

䜙蚈なこずを蚀い぀いでに、䜙蚈なこずをもう䞀蚀蚀っおオチにしよう。今回の蚘事を曞こうず『時間順序保護仮説』を読み返しお、P67に虚時間を含む時空のモデルずいう図が茉っおいるこずに気づいた。

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ただの球である。

だがこれっお、束本零士『ミラむザヌバン』の最終盀でヒロむンの有玀螢が「時間のモデルよ」ず蚀っお瀺したものず、そっくりではないか 束本が『ミラむザヌバン』を執筆したずきホヌキングの名はただ日本では知られおいなかったから、偶然の䞀臎にすぎないのだろうけど。

『ミラむザヌバン』も『時間順序保護仮説』も、版元品切れで新刊入手䞍可なのが、返す返すも惜しい し぀こいですねすみたせん。

カント入門 (ちくた新曞)

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時間順序保護仮説

時間順序保護仮説

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