しいたげられたしいたけ

空気を読まない 他人に空気を読むことを求めない

被災地において権利主張しないことは美徳でもなんでもなく弊害のほうが大きいように思う

ブログに書こうか書くまいか迷ったが、書くことにする。プライベートでは何度も喋ってしまっていることだが。

 

うちのブログにおいて「禁じ手」と決めていることが、何件かある。その一つは、他人に「ああするべきだ」「こうしてはいけない」などアドバイスめいたことを書くことである。「アドバイス罪」*1や「クソバイス」*2と呼ばれることもあり、害悪になることの方が多いと考えるからだ。

しかし、このたびの台風19号による被害が予想を超えた広い範囲にまたがっていることを知るにつけ、この列島のどこかに住んでいる以上、我々の誰もがいつ自然災害の被災者になってもおかしくないという思いを強くした。それで思い切って書いてしまう。

 

私は年に何度か、災害ボランティアに行っている。その決して広いとは言えない知見の範囲からであるが、ぜひ言いたいことがある。もし我々が運悪く被災者となったときには、けっして正当な権利の主張を遠慮してはいけないこと、他人の助けを求めることをためらってはいけないことを、強調したいのだ。

 

今年の台風19号による水害のような場合は、向こう三軒両隣が同じような被害にあうケースが多い。しかし、震災や台風15号のような風害中心の場合は、隣同士であっても、素人目にもこれは居住を続けることが危険ではないかと判断される家屋のすぐ隣に、少なくとも外見上はほとんど無傷のように見えるお宅が立っているのを目撃するケースが少なくない。

それはそれで原因がいろいろに考えられ、考察に値すると思われるが、いまは措く。

 

特定を避けるため詳細はあえてボカすが、過去にこんなことがあった。

同じような甚だしい被害を受けた家屋が、比較的被害の少なかった何軒かを隔てて並んでいた。

そのうちの一軒には、災害が去ったわりと早い時期から自衛隊が入り、ブルーシートを張ってきれいに応急措置が施された。

ところが何軒か隔てたもう一軒は、そのまま放置された。

近所の住人が疑問を感じて役所に問い合わせたそうだが、なぜそのような差が生じたのか、明瞭な回答はもらえなかったとのことだった。

 

想像するしかないのだが、自衛隊に応急措置をしてもらったお宅は被災直後に要望を出し、何もしてもらえなかったお宅は何もアクションをしなかったのではないか?

 

私がその場に出向いたのは、ボランティアセンターから派遣されたチームの一員としてだった。チームリーダーが派遣先の道を尋ねるために立ち寄ったお宅が、何もしてもらえず放置された方のお宅だった。ちょうどそのお宅のご主人が、業者と見積もりの話をしているところに話しかけたのだ。

業者はその日は、見積もりを取っただけで帰っていった。被災地まっただ中のことで、作業が始まるまでには、かなりの期間の順番待ちをしなければならないようだった。

 

業者と入れ違いに隣家の住人が出てきて、ご主人と我々ボランティアチームに、苦情を訴えた。隣家は直接の被害は少なくて済んだが、応急措置を受けられなかったお宅から崩落した建材により二次被害を受けているとのことであった。

ごく近所に応急措置を受けたお宅と受けられなかったお宅があるという事情は、その隣家の住人から説明を聞いた。

 

かなり長々とした愚痴を聞かされることになったが、我々としては「ボランティアセンターに戻った時に、そういうことがあったと報告することしかできない」と説明を繰り返すしかなかった。

応急措置を受けられなかったお宅のご主人は、ほとんど無言で聞き役に徹していた。

 

その後、ボランティア依頼先にたどり着きその日の作業を終えた後で、チームリーダーがボランティアセンターの職員に報告を行った。

職員によると、業者が入ってしまった以上は、自治体がなんらかの支援を行うことはできないとのことだった。だから今からは、自衛隊はもちろんボランティアチームを派遣することもできないということだった。

数あるお役所のタブーの一つに「少しでも民業の圧迫となる可能性があることには手を出せない」というのがあることは知っているが、何とも理不尽さを感じるやり切れない話である。

 

自然災害というものの嫌らしいことの一つに、同じような地域を繰り返し自然災害が襲うというのがある。震災には余震がつきものだし、このたびの台風15号と19号のようなケースもある。よりによってこれまでさんざん難病に苦しめられてきた人を、新たな病魔が狙う傾向があるのに似ている。

この被災地は、それからしばらく後にもう一つ別の天災に見舞われたことをニュースで知った。応急措置が受けられなかったお宅がどうなったか、そのご近所がどうなったか、とても気になるところだが、今となってはどうすることもできない。

 

なおこの話は、ボランティアセンターが設置された自治体の社会福祉協議会に、報告書が残っているはずである。つまり作り話ではない証拠のある事実である。

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*1:イラストレータの安田朗氏の造語と言われる

*2:エッセイストの犬山紙子氏にこの語をタイトルに含む著書がある