しいたげられたしいたけ

熱中症とデルタ株で人は死ぬがメダルで人命は救えない

特定のイディオムだけで使われる英単語は韻を手掛かりに探すとたくさん見つかりそう

前回6月6日付の拙エントリー で教えてもらったと書いた英語版ウィキペ "Fossil word"(化石語)を少しずつ読んでいるのだが、とにかく馴染みのある熟語がない。

私の勉強が足りていない可能性が高いにせよ、疑問が湧いた。数少ない知っていた熟語として "helter skelter" を挙げたのだが、ヘルター・スケルターがアリなら他にも知ってる熟語でアリそうなものがあるんじゃないか、と思ったのだ。

何が言いたいのかよくわからないな。その熟語以外では使われない単語を含む熟語を集めたいのだ。ただし辞書にしか載っていないようなものは除外して、外国語としての英語学習者でもなんらかの理由で知っていてもおかしくないもの限定で。

 

一例として "Fossil word" 項目中の "spick and span" というのが記憶に引っかかった。「真新しい/ぴかぴかの」という意味だそうだ。

この熟語は知らなかったが、ビージーズの名曲 "Sipks and Specks" を連想した。そういう者は私一人ではないはずだ。

検索すると、どうも造語らしい。こちらのサイトでは「きらきらしたかけら」と訳していた。

atstudiota.exblog.jp

 

英語版ウィキペ "Fossil word" の "See also" から "Siamese twins (linguistics)"というリンクを踏むと、"Irreversible binomial"(不可逆二項?)という項目に飛ぶ。ただしここは順序入れ替え不可の熟語を多数集めているので、この中から目的のものを選ぶとすると大変な手間がかかりそうだ。

en.wikipedia.org

この項目中には「たとえば "spick and span" の "spick" はこのフレーズのほかでは決して現れない化石語である」という説明があった。現れとるやん。

 

とまれ英語には「頭韻」とか「脚韻」とか「韻を踏む」という重要な概念があることは、ある程度学習が進んだ者はみな知っているはずだ。

中国語でも四声や平仄はきわめて重要だが、漢字のみを受容する過程で失念されがちである。英語の場合はそれがスペルに直截的に表れるだけに、無視されにくいのではないか。

 

マザー・グースの知識が少しだけある。平野敬一『マザー・グースの唄―イギリスの伝承童謡』(中公新書) の読者だったり、確かNHK教育で放送されていた 平野 先生監修の番組を観ていたりしたため。「確か」と書いたのは、ぐぐったが番組名を確認できなかったためだ。

「ヒッコリー、ディッコリー」とかいう韻を踏む言葉がなかったかな、ほとんど意味はなかったはずだけど、と思いつつ調べたら、あっさり出てきた。

"hickory, dickory, dock" だった。日本語の「チックタック」に近いオノマトペだそうだ。

なお ”hickory" をネット辞書で調べると「ヒッコリーの木」または「ヒッコリーの実」という意味が表示される。北米にそういう植物があるそうだ。”dickory" はヒットしない。そうそう、こういう単語を探したかった。

講談社英語文庫『マザー・グース―Mother goose』という本も持っていたんだった。

類似のフレーズとして "hickety pickety" というのが見つかった。これは覚えていなかった。単独の単語としては、いずれもヒットしない。巻末の訳注は「ひょこたんぴょこたん」と訳していた。

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講談社英語文庫『マザー・グース―Mother goose』P25、50

 

ちなみに "hickory dickory dock" を強引に weblio英和辞典 に放り込むと、アガサ・クリスティ の邦訳のタイトル『ヒッコリー・ロードの殺人』がヒットする。原題が "Hickory Dickory Dock" なのだ。

ejje.weblio.jp

 

ミステリに限らず英米の文芸で、マザー・グースに取材したものは極めて多い。

ハンプティ・ダンプティ(Humpty Dumpty)だって、元はマザー・グースだが『鏡の国のアリス』に本家取りされてしまっている感がある。"humpty" は英辞郎が「クッションのついた低い腰掛け」と出してくれたが "dumpty" はハンプティ・ダンプティ以外ヒットしなかった。

固有名詞かなこれ? 固有名詞はどうしよう? 今回は深く考えまい。

手元の講談社英語文庫版から、ジョン・テニエル の挿絵を借用させていただきます。おや、左側の塀の上のハンプティは、右下が逆L字状に欠けているところまで含めて(たぶんオリジナルがそうなっていたのだろう)ネットでよく見かけるが、右側の王様の家来(king's man)と一緒のイラストってあんまり見ない気がする。

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講談社英語文庫『鏡の国のアリス―Through the looking‐glass』P102、114 

 

連想したのでついでに貼ってしまおう。マザー・グースのほうはノーランズの "All the King's Horses" の元ネタでもある。

www.youtube.com

 

"hickory, dickory, dock"、"hickety pickety"、"Humpty Dumpty" いずれも英文ウィキペ "Irreversible binomial" 項目中には見当たらない。

脚韻ばっかりだな。頭韻はないか? 『鏡の国のアリス』にはトゥイードルダムとトゥイードルディー(Tweedledum and Tweedledee)という兄弟が出てきたな。固有名詞だけど。そして確認のためぐぐると元ネタはやはりマザー・グースなのか。

こいつら。文字のないページだったので余白をトリミングした。

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 『鏡の国のアリス―Through the looking‐glass』P62

 

素人がちょっと考えただけでこれだけ出てくるのだから、よく探せばどこかにごそっと集まっていそうな気がするので、引き続き探してみる。

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